今後の研究の推進方策 |
(1)平成29年度は、「無知」研究として検討する対象を、社会学以外の領域にも広げ、科学史・科学技術社会論・人類学および法社会学の領域での無知研究の現状も参照する。この検討にさいしては、C.Engel,J.Halfmann,M.Schulte,hrsg.,Wissen-Nichtwissen-Unsicheres Wissen,Nomos,2002やN.Proctor,et.al.,Agnotology: The Making and Unmaking of Ignorance,Stanford UPなどの研究蓄積を手がかりにしながら、幅広くフォローする作業を進める。また、無知の「構築」的性質とそれゆえの問題(健康や生態系といった無知の「物質的」次元とのズレなど)を明らかにするために、(2)リスク規制の各領域ごとの「無知」(想定外)の扱われ方の相違を、具体的事例に則しながら考察する。同じ国家領域内部でもリスク規制の領域ごとに、また同じリスク規制領域でも国家ごとに、たとえばステークホルダーの参加の度合い、専門家の位置づけ、アカウンタビリティや透明性の要求される度合いなどに多様性があり、C.Hoodらの研究を手がかりしつつ、この点についても検討を加えたい。(3)無知や不確実性を伴うリスクをどのように処理するかという問題は、リスクガバナンスにとって重要な課題であり、頻繁に参照される国際リスクガバナンス評議会(IRGC)のリスクガバナンスモデルについて詳細な検討を加える。(4)また「科学と社会」の関係をより精確に追求するには「社会」の内実、すなわち従来の社会学で語られてきた「機能分化論」ないし「セクターモデル」の彫琢も必要となるため、補助的作業としてこの点の検討も今年度実施する。
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