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2017 年度 実施状況報告書

リスクと「無知」の社会理論のための基盤研究―東日本大震災後の社会学の新たな課題―

研究課題

研究課題/領域番号 16K04026
研究機関東北大学

研究代表者

小松 丈晃  東北大学, 文学研究科, 准教授 (90302067)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードリスク / 戦略的無知 / 想定外
研究実績の概要

東日本大震災以後「想定外」について数多く語られ、また現在でも被災に関わる「責任」の所在を巡る対立の中で「知り得ない(得なかった)」「想定外」が議論の対象とされているとおり、「無知」は現代社会の鍵概念の一つでもあり、本研究課題は、その精緻な社会学的分析のための理論的基礎を形づくることを目的としている。2年目にあたる平成29年度は、当年度の研究計画に基づき、(1)まず、どのような「リスク」の領域かに応じてリスク規制の有り様や「無知」の扱われ方が多様であるとの前提のもとでリスクガバナンスのフレームワークを構想し世界的に注目されている、オートウィン・レンないし国際リスクガバナンス評議会(IRGC)の議論を、東日本大震災の状況も念頭に置きながら批判的に検討し、リスクの「種類」を誰がどのようにして区別するかという論点をさらに深める必要があることを、指摘した。(2)また、無知が社会的に「構築」されそれが「物質的次元」とのズレをもたらすという前年度得られた観点に基づき、日本における「地震リスク」への対処法の問題点を、日本の地震対策の歴史をもひもときつつ、指摘した。ここでは、学際的な「無知」研究の可能性を探るためにも、「地震学」の知見も適宜参照した。さらに、(3)「機能分化」論は、社会学がその歩みを開始した当初からの伝統的テーマだが、「無知」をこの「機能分化」という近代の中心的構造との関わりの中で検討するという課題と関わって、機能分化の現代的有り様あるいはその変容について検討するための学会報告を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度は、「研究実績の概要」で触れたとおり、当該年度で行う予定だった課題をおおむね達成し、特に、地震リスクへの対処という具体的問題に即して、「戦略的無知」概念の重要性を指摘しえたことは本研究課題にとって重要である。当初予定していた本年度の研究計画はおよそ年度内に研究成果を収め、さらに「機能分化」論の検討にも着手しえた。ただし、社会学以外の分野での「無知」研究の拡がりをまだ十分にはフォローしえていない現状にも鑑みて、「おおむね順調に進展している」と評した。

今後の研究の推進方策

最終年度にあたる平成30年度は、(1)東日本大震災後の「無知をめぐる争い」でも言うべき状況を念頭におきながら、社会学および社会学以外の多様な「無知」研究の整理・総括し、無知の「構築」的性質や無知の「政治性」を視野に入れた、新しい無知研究の理論的基礎を固めるために、これまで2年間の研究をふまえて、単著『リスクと無知の社会学』(仮題)として公刊する予定である。また、(2)これと並行して、「科学と社会」の関係に対する精確なアプローチを試み社会の各セクターごとの無知の構築のされ方の違いを浮き彫りにしていくために、(社会学において伝統的なテーマである)機能分化論の再検討、ならびにJ.Meyerらの(社会学的)新制度派の議論と(機能分化論に立脚する)社会システム理論との接合の試みを検討する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 地震リスクと二つの不確実性2017

    • 著者名/発表者名
      小松丈晃
    • 雑誌名

      高橋誠・室井研二編『巨大地震災害の国際比較研究書』名古屋大学大学院環境学研究科

      巻: 2 ページ: 1-12

  • [雑誌論文] 書評:齋藤吉雄著『応用社会学原論―現代社会学と社会調査はどのように役立つか―』2017

    • 著者名/発表者名
      小松丈晃
    • 雑誌名

      社会学研究

      巻: 99 ページ: 207-214

  • [雑誌論文] 書評:伊藤美登里著『ウルリッヒ・ベックの社会理論―リスク社会を生きるということ』2017

    • 著者名/発表者名
      小松丈晃
    • 雑誌名

      図書新聞

      巻: 3327 ページ: 5-5

  • [学会発表] 社会システム論による「社会」概念と分化論2017

    • 著者名/発表者名
      小松丈晃
    • 学会等名
      日本社会学史学会
    • 招待講演
  • [図書] ガバナンスとリスクの社会理論:機能分化の視座から2017

    • 著者名/発表者名
      正村俊之、小松丈晃、荒川敏彦、加藤眞義、高橋徹
    • 総ページ数
      183(担当頁71-108[第3章])
    • 出版者
      勁草書房
    • ISBN
      978-4326602995
  • [図書] コミュニティ事典2017

    • 著者名/発表者名
      伊藤守・小泉秀樹・三本松政之・似田貝香門・橋本和孝・長谷部弘・日髙昭夫・吉原直樹編
    • 総ページ数
      1168頁(担当頁:924-925頁)
    • 出版者
      春風社
    • ISBN
      978-4861105388
  • [図書] 社会学理論応用事典2017

    • 著者名/発表者名
      日本社会学会理論応用事典刊行委員会
    • 総ページ数
      948頁(担当頁:212-213頁)
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      978-4621300749

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公開日: 2018-12-17  

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