研究課題/領域番号 |
16K04027
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
瀧川 裕貴 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60456340)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 場の理論 / 分極化 / オンライン実験 / 計算社会科学 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、研究計画に従って、場の解析を行うための方法論とデータ収集法を開発し、国際会議においてその成果を報告した。平成28年度に実施した理論調査において、 場の解析のためには「関係性のデータが不可欠となるため、計算社会科学の手法を用いて、ウェブやデジタルアーカイブから関係性を直接観察記録したソーシャルデータを取得して用いる.その上で、メカニズムの解明については、因果を同定可能なサーベイ実験やオンライン実験を援用する」ことの有用性が明らかになった。この方針に従って、大きく2つの研究計画を立てた。第1はウェブ上の観察データを用いた場における分極化メカニズムの解明である。具体的には、ソーシャルメディア上での政治的意見の分極化メカニズムを明らかにするため、TwitterにおけるTweetデータを大量に収集した。そのうえで、ネットワーク分析と自然言語処理を組み合わせて、分極化の程度を測定する新たな方法を開発し、これに従って、Twitter上における分極化のメカニズムを明らかにした。第2は、オンライン実験の手法を用いた分極化についての社会的影響力の因果効果の推定である。第1の成果は国際会議で発表し、プロシーディングスに公表した。第2の成果は国内学会で発表済みであるが、さらなる拡張は次年度に持ち越された。その他に関連研究として、日本の国会という場における道徳や社会意識のダイナミクスを分析し、成果を国際会議にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は本プロジェクトの最終年度である。文化場の解析のための方法論の構築を目指してこれまでの成果をさらにまとめていくとともに、新たにいくつかの実験、調査を遂行する予定である。まず、オンライン実験は、場の作動に係る局所的な因果メカニズムを明らかにするためにきわめて有効であるとの感触が得られたため、これをさらに進めていく。すでに複数の国際会議での成果発表が予定されているが、それらで得られたフィードバックを元に最終的な成果をまとめていく予定である。また、場の解析のためのフィールドとして、Twitterにおける分極化の検討も引き続き進めていくが、今年度はさらに分極化のダイナミクスに焦点を当てた解析を行う。これらの経験的研究とともに、本研究では数理モデルの開発も目指している。実験や観察研究で明らかになった知見を数理モデルやエイジェントベースドモデルを用いて統合する。そのことによって、文化場の解析のための基本理論を打ち立てることが本年度の目的である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験・調査実施予定の一部が次年度にずれ込んだため、予定より支出が少なくなったため。差額は次年度に主として実験・調査の費用として使用する。
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