研究課題/領域番号 |
16K04029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三輪 哲 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (20401268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会移動 / 下降移動 / 中途退学 / 離婚 / 離職 |
研究実績の概要 |
本年度は3年間の計画の初年度に当たり、研究成果はもっぱら既存データの再分析(二次分析)によって創出された。 下降移動を教育・家族・職業というさまざまな領域から包括的に考察するのが本研究課題の特質であるが、それらのうち、本年度では、職業キャリアにかかわるものとして、「非典型雇用者の社会移動」を扱った。そこでは、1980年代から2010年代までにかけて、産業や職業構成が大きく変わる中で、非典型雇用に限るとその構成変化は決して大きくはないこと、また同じ職業に分類されつつも非典型雇用では休職した時代状況の影響を受け、実質的に仕事の中身がダウングレードしていく傾向がみられることがわかった。さらに非典型雇用者は社会移動のチャンスにおいて不利なのだが、それが2000年代以降でさらに拡大しつつあることが明らかにされた。 もう一点、教育の領域について、中途退学にかんして既存データの実証的分析をおこない、論文を発表した。そこにおいては、高等教育からの中退には明確な社会階層(出身階層)による格差があること、ただし階層格差の様相は進学におけるそれとは異なるパターンを示すこと、さらには中退の階層間格差は戦後通じてほぼ安定的に推移してきたこと、すなわち中退にみられる社会階層間格差は最近になって顕現した現象ではなく、かねてより存在したものであることが明らかにされた。 以上のことより、下降移動にかかわり、不利な社会的位置にある者がいっそう不利な経路へと進みやすくなっていること、すなわち不利の蓄積メカニズムの所在がうかがえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度を終えて、研究の具体的計画・指針策定のための研究会合と、参考資料収集のための国内外の学会大会参加などを中心として、進めてきた。代表者と研究協力者のあいだでは、密な連携体制を組み、国内外の先行研究を渉猟して整理にあたった。また、連携研究者からは、適宜助言をしてもらい、モデルの洗練化につとめた。 既存のデータへとアクセスし、それらの再分析にもつとめた。それらの成果のうち一部については、論文や記事、学会報告として、成果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究活動は、独自の社会調査をおこなうのが中心となる。 これまでの既存研究やデータの検討に基づき、7月までに調査票を完成させる。同時に、東京大学社会科学研究所の研究倫理審査委員会へと調査設計・調査票を提出し、許可を得る。その後10月に実査、11月にデータ納品するように進める。データ納品後、データクリーニングに速やかにとりかかり、ミスや論理エラーを除去して、データを整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が当初予定よりもかからなかったため、若干残額が生じた。しかしながら、次年度(平成29年度)には調査を控えており、そのための費用を少しでも多くしたいため、無理に使わずに次年度にまわすこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度におこなう予定の調査にかんして、予備調査が必要となるが、そのための費用にあてる。
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