東日本大震災における原子力発電所の事故とそれによる甚大な放射能汚染をうけつつ、福島県で農業を営む人びとが、食のリスクをめぐってどのような活動をおこなっているのか、フィールドワークをおこなった。主として二本松有機農業研究会の活動と、福島県有機農業ネットワークの活動を調査対象とした。 また、主として農薬の健康リスクに消費者が関心を高めた1970年代に興隆し現在にいたる有機農業運動であるが、その担い手であり続けた日本有機農業研究会所属の生産者をおとずれ、現在においてどのようにリスクをめぐって消費者と対峙しようとしているのか参与観察をおこなった。この運動は、公害運動と深くつながっており、そのことを強く意識した開催である熊本県水俣市での大会に参加した。 健康と食のリスクへいかに対処するかといった関心にもとづきながら、世界各地でCommunity Supported Agricultureなる試みが隆盛している。さまざまなリスクに対して、地域における人と人とのつながりを模索しながら、ともに考え対処しようという動きである。グローバルな広がりをみせるその活動の一端を探るため、イギリスへおもむき、マンチェスターをはじめとした各地の生産者とボランティアの取り組みについてフィールドワークをおこなった。 以上の実績もふまえた研究を、2020年7月にブラジルにて開催される(後日、covid-19の感染拡大により2021年2月に延期となる)International Sociological Associationでの報告としてエントリーしたところ、'Theorising Uncertainty and Risk in the Post-Truth Public Sphere'というセッションにて採択された。
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