研究課題/領域番号 |
16K04042
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
渡邊 勉 関西学院大学, 社会学部, 教授 (30261564)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アジア・太平洋戦争 / 徴兵 / 職業軍人 / 計量歴史社会学 / 社会的不平等 |
研究実績の概要 |
第一に、復員兵の戦後の職業経歴から戦後占領期の労働市場の特徴について検討した。特に、復員兵が、復員後の再就職において不利だったのか、そしてもし復員兵が不本意に仕事を見つけていたとしたら、転職がおきやすかったのかについて検討した。その結果、大きく2つの知見を得た。1点目として、戦後復員兵は兵役未経験者に比べて、自営、農業に就きやすかった。つまり復員後仕事がなく、労働市場の中で不利な立場であった。2点目として、戦後復員兵は転職しやすかった。つまり不安定な位置にいた。ただし、戦時中に転職した者(徴用なども含む)のほうがさらに不安定であった。以上から、復員兵にとって戦後の労働状況はかなり厳しいものであったことがデータから明らかになった。 第二に、職業軍人の戦後の職業経歴について検討した。分析の目的は、1点目として職業軍人の出自、属性を明らかにすること、2点目として職業軍人の退役後の職業経歴を明らかにすること、3点目として職業軍人は他の職業の人とどのような違いがあるかを明らかにすることであった。結果は、出自についてはホワイトカラー出身者と農業出身者に別れているということ、戦後の職歴は大きく2つに別れ、比較的高い階層で安定的に働く者と、農業に就くか、不安定な就業を続ける者に分かれた。そこには格差が見られた。さらに他の職業についた者との違いは、職業軍人は相対的に不安定であった。またブルーカラーとして働く者が少ないという特徴があった。以上から、職業軍人は、エリート層と非エリート層で戦後の職業経歴のあり方が異なるということが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アジア太平洋戦争が日本社会に与えた影響については、SSM調査データを中心としたデータ分析を通じて、昨年度に引き続き、知見を積み重ねている。分析を通じて、徐々に戦争の影響と不平等の実態が明らかになってきているが、より詳細な分析をおこなっていく必要がある。 SSM調査以外のデータ分析については、まだ十分におこなっておらず、平成30年度以降、重点的に研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、引揚者名簿、想定名簿の分析については、分析の可能性、計画について検討し、分析を進められるようにする予定である。 第二に、官庁統計、都道府県統計書についても、資料をそろえているが、データが断片的であるために、まだ分析計画を建てられていないので、計画を立て、分析を進めていく。 第三に、戦争社会学研究者との共同研究も進めているので、そちらについては計量分析の可能性と限界について検討し、戦争社会学研究の中における本研究の位置づけと方向性を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初、調査票閲覧といった資料収集のための資料調査を行う予定であったが、まだ十分におこなうことができず、資料収集の費用に未使用額が発生した。 (使用計画)資料調査をおこない、資料収集、データ化をさらに進めていく予定である。
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