昨年度までの当該研究の結果、離婚に至る過程は極めて多様であること、そして、協議離婚の場合、離婚届出に至るまでの過程で、離婚自体および離婚条件について、十分な協議がなされていないことが明らかとなった。とくに、離婚前にすでに夫婦双方で協議ができる状況になく、第三者の関与もないために、子どもの監護に関する取決めが不十分であるケース、また、取決めがなされている場合でもその内容に合理性を欠くケースがみられた。 そこで、本年度は、離婚過程において、夫婦双方の協議だけでなく、弁護士や家庭裁判所の調停委員等の第三者を交えた協議が行われた離婚ケースを検討に含めるため、そのような経験を有する首都圏在住の離婚シングルマザーを対象に、相手方の合意を経て、インタビュー調査を実施した。その結果、離婚紛争の過程で調停委員や弁護士等の第三者が関与しているケースでは、子の養育費や面会交流の取決めが成立し、取決めた内容が調停調書や公正証書として作成されていた。しかし、そのすべてのケースで、取決めどおりに履行されているわけではないことが明らかとなった。さらに、その不履行に対して、強制執行等の法的手段を用いることができるにもかかわらず、追加的な費用が生じることや、離別した元夫との交渉を再開することの負担感から、履行確保を断念するケースもみられた。 研究全体を通して、未成年の子のいる夫婦の離婚において、子の権利を保障するためには、離婚前に親教育を徹底すること、離婚後の子の監護に関する協議について、調停の仕組みが利用できるようにすること、養育費を確保するための履行強制制度を導入することの必要性が明らかとなった。
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