本研究は、地方自治法にもとづく一般制度としての「地域自治区」に注目し、地域自治すなわちコミュニティ・レベルでの住民の自治の存立条件を2都市の比較研究をとおして明らかにすることによって、地域自治の制度設計に援用しうる知見を得ることを目的としている。地域自治は、住民による組織・活動の水準(「住民自治」の側面)と自治体による制度的保障の水準(「団体自治」の側面)によって、その存立が決定づけられる。本研究では、全国で唯一、地域協議会に公募公選制を導入している新潟県上越市と、地域システムとしての公民館-分館活動の実践を積み重ねてきた長野県飯田市を対象とし、現地での聴き取り調査を行うことによって、地域自治を深化させる制度的・主体的条件を定性的・定量的に明らかにすることをめざした。 上記の研究目的を達成するため、平成30年度は、8月に飯田市において現地調査を行い、行政や地域自治区からの聴き取りと資料収集を行った。また、コミュニティ政策学会地域自治区研究プロジェクト研究会(5月、12月、2019年3月の3回)、日本社会学会(10月)、コミュニティ政策学会シンポジウム(12月)、に参加し、研究報告を行うとともに、研究交流に努め、知見の彫拓をめざした。 研究成果の社会還元という点では、上越市についての総括として、「上越市の地域自治区はいま─住民意思決定機関としての地域協議会」『月刊自治研』2018年8月号(pp.48-53)を公刊したほか、2019年2月には、飯田市での現地報告会を行った。
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