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2016 年度 実施状況報告書

コモンズ理論の現代的探究-河川環境との関連で-

研究課題

研究課題/領域番号 16K04054
研究機関千葉大学

研究代表者

井上 孝夫  千葉大学, 教育学部, 教授 (10232539)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードコモンズ / 総有 / 景観 / 河川敷の不法占用
研究実績の概要

今年度はまず研究の前提となる概念の整理を行なった。コモンズとは「だれに対しても開かれた土地」であり、それは自由利用を原則とする。それに対して、農地の総有や山林の入会もコモンズである、とみなす議論がある。まず農地の総有については、かつてそのような形態があった、というだけで、現実には制度上の根拠もなく、農業生産力の上昇や都市化の進展によって解体していることを確認した。また入会地についても、その多くは私有化されたり、別荘地やゴルフ場に転用され、コモンズの名にはふさわしくないことを確認した。
つづいて、総有に環境保全上の意義がある、とする議論の検討を行なった。事例として取り上げられていたのが東京都国立市の景観をめぐる議論だったので、独自に実態調査を実施し、景観を乱すとされたマンションの建設経過や周辺環境について検討した。建設経過に関していえば、合法的であり、妥当と判断する以外にはあり得なかった。これは裁判でも確定していることである。また、景観の攪乱についてはもともと主観的判断が大きく作用し、しかも当該地域が国立駅から1.2キロメートル南方に位置していることから、国立市民全体の共通理解は得にくいのではないか、という結論に至った。つまり国立市民が景観を「総有」する、というのであれば、その裏付けとして条例や制度を早期に整えておく必要があったわけだが、そうはならなかった点に市民の意向が反映していたとみなさざるを得なかった。
コモンズに関わる事例として、もう一件、千葉市を流れる花見川河川敷の不法占用問題について実地調査を行なった。ここではコモンズとしての河川敷が私的に耕作されたり小屋が設置されたりしていて「コモンズの悲劇」が生起していた。その要因として、管理と利用のあり方の問題が浮上するが、この点については今後さらに深めていくことにしたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は議論の前提となる概念の整理を行ない、コモンズと総有、入会は別物だという点を確認することを第一の目標としたが、その点は達成できた。
その上で、事例研究に移ったが、前提となる議論の流れから対象地域を変更して、東京都国立市の景観問題を扱った。この問題については相応の時間をかけて調査、検討し、論文としてまとめることができた。さらに、2017年2月には、以前から問題となっていた花見川河川敷の不法占用について管理主体である千葉県の一部強制執行の動きもあり、執行前の状況と執行後の状況についての資料を収集し、コモンズとしての河川敷の保全、利用の検討材料とすることができた。
以上、内容の変更はあったものの、理論的検討と事例調査に関しては予定通りにすすめることができた。

今後の研究の推進方策

基本的に、コモンズの具体的な対象物である河川敷、流水、海岸、景観などの事例にかかわる調査を中心に研究を推進していく。
河川敷については前年度から問題化している千葉市・花見川について、その動向を追跡していく。
流水については、東京都奥多摩町の管理型渓流釣り場の利用状況を調査する。
海岸については、各地で「オープン・カフェ」の設置が話題に挙がっているので、いくつかを選んで利用実態について調査する。
以上の事例から、現代コモンズの理論的枠組みを見極めていく。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] 現代コモンズ理論と総有論2017

    • 著者名/発表者名
      井上孝夫
    • 雑誌名

      千葉大学教育学部研究紀要

      巻: 65 ページ: 303,312

    • 謝辞記載あり

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公開日: 2018-01-16  

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