今年度は、前年度からの積み残し課題として設定していた次の二つの問題について結論を得た。 第一の課題は、河川敷の占用問題について、1993年に公表された総務省行政監察局の結果報告書以降の動向を検討することであった。関東管区行政評価局が2003年、2014年、2018年に行なった河川管理についての行政評価の内容について検討したが、不法占用、不法係留船などについては警告などの措置をとって、一部は強制撤去も実施したものの、依然として問題の解決には至っていない現状が浮かび上がってきた。さらに河川敷ゴルフ場については河川占用準則の規準に沿って、合法化されるようになった、という側面があることを確認した。 第二の課題は、コモンズの理論的整備を精緻化していくことであった。その際、コモンズを文字どおり「みんなのもの」として特定の主体の独占物から開放していくという視点が重要であることを確認した。そして東京都豊島区の公園の事例を取り上げた。この公園は自由利用の原則が結果的にホームレスなどの利用に独占され、地域住民や一般市民が利用しがたくなっていた。これに対して、公園を管理する行政はオープンスペースを自由利用にするのではなく、一定の公共目的に沿ってつくり変えるという方策を採用したが、そこにコモンズを実質化するための一定の意義を見出した。これを河川敷の占用に応用すれば、河川敷を公共目的に沿ったかたちで何かに利用したい、という切実さによって、新たな利用形態を展望できることを示した。
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