本研究は、文献研究とインタビュー調査によって、農業協同組合(以下、JA)による農村における保健医療活動ならびに福祉活動の形成・展開過程を歴史社会学的に考察することが目的である。最終年度となった令和元年度は、文献研究に関して、インタビュー対象者が所属するJAの資料を現地で集中的に収集した。JA助けあい組織活動の変遷と女性組織の活動実態に関して、沿革史にとどまらずインタビュー対象者による講演記録やJA広報誌および一般誌への寄稿文まで目配りすることができた。インタビュー調査に関しては、中国地方にあるJAの組合長と元生活指導員2名の計3名へ実施した。このJAについては、本研究期間の4年間で様々な立場や異なる在職(活動)時期の対象者から体験を聞き取ることができ、収集資料とあわせ内容の分析を進めているところである。 研究期間全体を通して、保健医療活動に関しての実態把握は手薄になったものの、福祉活動とくに高齢者福祉活動については、その参入過程と現在に至る展開について検証する手掛かりを得た。最終年度で聞き取りを行った元生活指導員からは、高齢者の見守り活動や介護のほか、ある時期には助産施設の運営にも関与していたことが判明し、高齢社会を先取りした地域における高齢者支援の意図やそこに関与するJAの女性組織が果たした役割を再検討する必要性があると考えている。最終的に、本研究においては、組合員のみならず地域住民の生命と生活を安定的に支えるための協同組合による住民組織の育成や資源の開発の一端を明らかにすることができると考える。
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