研究課題/領域番号 |
16K04056
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
堂免 隆浩 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (80397059)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多元的価値 / 公共性 / 市民社会 / 非営利セクター |
研究実績の概要 |
本研究は、非営利セクターが公共用地の管理運営に参加する条件を解明し、日本型市民社会の成立条件を明らかにすることにある。 平成29年度は、1)公共用地の用途に基づく事例の類型化、および、2)非営利セクターによる公共用地の管理運営への参加を担保する制度と公共用地の物理的および環境的条件の確認のための作業を行った。1)公共用地の用途に基づく事例の類型化では、公共用地の管理運営を行う非営利セクターの特徴を確認するために必要である。「公共用地」は国や地方自治体のような公共主体が所有している土地という点で共通しているものの、その用途や規制は様々と考えられるためである。そこで、既存研究をレビューした結果、都市公園等のように特定の用途が予め決まっている「特定用途型公共用地」と未利用地のように特定の用途が定まっていない「不特定用途型公共用地」に分類できた。 2)非営利セクターによる公共用地の管理運営に参加を担保する制度と公共用地の物理的および環境的条件の確認では、ボール遊びが許可されている東京都調布市にある「くすのき第1児童遊園」において、児童館、保育園、そして、PTAの代表者を対象とした対面式の聞き取りを行った。結果、くすのき第1児童遊園は公営住宅の敷地内にあり、ボール遊びを迷惑と感じる可能性がある公営住宅の住民を代表する自治会と公園で子どもを遊ばせる保育園、児童館、小学校の交流を可能としていた。児童遊園を取り巻く物理的および社会的環境が一律の場合は、公共用地の管理運営が容易となる可能性があるのに対し、多様な場合は困難となる可能性があることを示唆していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた作業は、1)日本および海外の既存研究で明らかにされている公共用地の管理運営の現状と非営利セクターの参加動向の確認、および、2)公共用地の管理運営の分類、であった。作業1)では、既存研究をレビューし、日本および海外における公共用地を巡る課題内容の整理を行うことができた。また、非営利セクターの参加動向を確認することができた。作業2)では、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の市区を対象に絞り電話調査を実施した。結果、公共用地の管理運営の大まかな分類を行うことができた。 平成29年度に予定していた作業は、3)公共用地の用途に基づく事例の類型化、および、4)非営利セクターによる公共用地の管理運営への参加を担保する制度と公共用地の物理的および環境的条件の確認、であった。作業3)では、公共用地を研究対象とした既存研究をレビューし、公共用地を類型化した。作業4)では、当初、アンケート調査を実施予定であった。しかし、調査予定時期が各市区町村の議会の会期と重なり、アンケートの回収率が低くなる可能性が高まったことから、アンケート調査票の発送は平成30年度に繰り越すこととした。そこで、代替として、公共用地の物理的および環境的条件と非営利セクターの参加傾向との関係を確認するため、東京都調布市にあるくすのき第1児童遊園を対象としたインタビュー調査を実施した。結果、児童遊園を取り巻く物理的および社会的環境が管理運営に影響を及ぼす可能性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、作業4)において繰り越した、アンケート調査を実施する予定である。そして、非営利セクターにおける参加インセンティブの構造を確認するとともに、非営利セクターが公共用地の管理運営に参加する条件の総合的検討、を行う。 平成31年度では、結果の妥当性を検証するための追加インタビュー調査を実施し、総合的な考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、非営利セクターによる公共用地の管理運営への参加を担保する制度と公共用地の物理的および環境的条件の確認を行うために、アンケート調査を実施予定であった。しかし、調査予定時期が各市区町村の議会の会期と重なり、アンケートの回収率が低くなる可能性が高まったことから、アンケート調査票の発送は平成30年度に繰り越すこととした。
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