研究課題/領域番号 |
16K04056
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
堂免 隆浩 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (80397059)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多元的価値 / 公共性 / 市民社会 / 非営利セクター |
研究実績の概要 |
本研究は、非営利セクターが公共用地の管理運営に参加する条件を解明し、日本型市民社会の成立条件を明らかにすることにある。 平成30年度は、非営利セクターが公共用地の管理運営に参加する条件を確認するためのアンケート調査を実施した。平成28年度の作業成果では、「公共用地」を特定の用途が予め決まっている「特定用途型公共用地」と未利用地のように特定の用途が定まっていない「不特定用途型公共用地」に分類できた。その上で、全ての公共用地をアンケート調査対象とすることは現実的ではないことから、本研究では「特定用途型公共用地」の典型である「公園」を対象とすることとした。次に、調査の依頼先を再検討した。当初は非営利セクターを調査の依頼先とすることを考えていた。しかし、非営利セクターに対するアンケート調査では回収率が低くなる恐れがあること、また、公園の管理運営を誰に任せるかの決定は公園の所有管理者である行政であること、から今回の調査対象を市区町村が管理する公園とし、全国の市区町村の公園管理担当部課、および、政令指定都市については本庁だけでなく区を調査の依頼先とした。調査期間は2018年8月~10月で、調査方法は郵送での調査票の送付および回収、有効回答数は1,063票、有効回答率は58.4%であった。 今回のアンケート調査において、各自治体の公園で主に管理を担っている団体組織を確認すると、932自治体の内、地縁団体が260(29.7%)、NPOが108(12.3%)、行政が297(33.9%)、民間企業が180(20.6%)、そして、その他が30(3.4%)と、多様な団体組織が公園の管理運営を担っていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた作業は、1)日本および海外の既存研究で明らかにされている公共用地の管理運営の現状と非営利セクターの参加動向の確認、および、2)公共用地の管理運営の分類、であった。作業1)では、既存研究をレビューし、日本および海外における公共用地を巡る課題内容の整理を行うことができた。また、非営利セクターの参加動向を確認することができた。作業2)では、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の市区を対象に絞り電話調査を実施した。結果、公共用地の管理運営の大まかな分類を行うことができた。 平成29年度に予定していた作業は、3)公共用地の用途に基づく事例の類型化、および、4)非営利セクターによる公共用地の管理運営への参加を担保する制度と公共用地の物理的および環境的条件の確認、であった。作業3)では、公共用地を研究対象とした既存研究をレビューし、公共用地を類型化した。作業4)では、当初、アンケート調査を実施予定であった。しかし、調査予定時期が各市区町村の議会の会期と重なり、アンケートの回収率が低くなる可能性が高まったことから、アンケート調査票の発送は平成30年度に繰り越すこととした。そこで、代替として、公共用地の物理的および環境的条件と非営利セクターの参加傾向との関係を確認するため、東京都調布市にあるくすのき第1児童遊園を対象としたインタビュー調査を実施した。結果、児童遊園を取り巻く物理的および社会的環境が管理運営に影響を及ぼす可能性を確認した。 平成30年度では、当初平成29年度に予定していたアンケート調査を実施した。また、当初平成30年度には、作業5)非営利セクターの参加条件に対する総合的検討、を予定しており、調査より得たデータを下に統計分析を行った。ただし、平成30年度中に統計分析を完了させることができなかったため、31年度に繰り越すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度では、平成30年度に引き続き、データを元に統計分析を行い非営利セクターが公共用地(特に、公園)の管理運営に参加する条件の総合的な検討を行う。また、必要に応じて、統計分析の結果の妥当性を検証するため、市区町村に対するインタビュー調査を実施する。
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