1.柏崎刈羽原子力発電所が立地する新潟県の地域防災計画・広域避難計画、および新潟県「原子力災害時の避難方法に関する検証委員会」による検証資料を収集・分析した。また、敦賀・美浜・大飯・高浜の各原子力発電所が立地する福井県庁および同県小浜市役所で担当者から原子力災害時の避難計画に関するヒアリングと資料収集を行った。その結果、複合災害への対応や住民への情報伝達、広域避難訓練のあり方など多くの課題があることを確認できた。 2.こうした課題も念頭においた上で、本研究の貢献すべきテーマとしては、予想を超えて長期化している原発避難の状況を詳細に記録し、今後の原発避難計画策定に資することであることが確認できた。 3.広域避難計画策定の前提となる福島第一原発事故からの避難者・支援者を対象としたヒアリングと資料収集を、新潟県新潟市・柏崎市・上越市、福島県南相馬市、東京都、群馬県前橋市において実施した。その結果、避難時の困難と、時間の経過とともに複雑化・多様化している避難者の状況、避難の長期化に伴う避難者の孤立化・潜在化の問題、それらに対応した支援者の活動や課題について明らかにした。 4.上記の研究にもとづいて、『故郷喪失と再生への時間』『原発避難と再生への模索』(いずれも東信堂)と題した2冊の図書(単著)を刊行した。それ以外に図書(共著)を3点、学術論文を5点公刊し、4本の学会報告をおこなった。いずれも原発避難を経験した個人の「語り」にもとづいて深刻な被害を明らかにし、そこから再生するための課題を探ったものである。被害の自己責任化を乗り越え、被災者同士および被災者と非被災者を繋ぎ直す試みに、解決の糸口があるという提起をおこなった。
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