研究課題/領域番号 |
16K04061
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
上村 泰裕 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70334266)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 福祉国家 / 東アジア / ワークライフバランス / 社会学 / 福祉社会学 |
研究実績の概要 |
名古屋と台湾(台北と台中)において、仕事と子育ての両立の現状がいかに異なっているかを明らかにすべく、正社員として働く母親を対象とした聞き取り調査を行なうとともに、背景となる構造的要因に関する統計分析を進めた。名古屋調査では、昨年度の企業調査に応じて下さった企業の人事部から調査対象者の紹介を受け、就学前もしくは小学校低学年のお子さんを持つ女性正社員20名(製造業2社5名と卸小売業4社15名)に対して聞き取りを行なうことができた。一方、台湾調査では、協力関係にある研究者から調査対象者の紹介を受け、就学前もしくは小学校低学年のお子さんを持つ女性正社員8名(台北4名と台中4名)に対して聞き取りを行なった。いずれも名古屋大学文学部の社会調査実習の一環として、学部生・大学院生の協力を得て実施した。 調査対象は優良企業の正社員に限られており、日本と台湾でサンプリングの方法が異なるなどの問題もあるが、それをふまえてもなお有意義な知見が得られた。具体的には、優良企業の社員でも仕事と子育ての両立にかなりのコンフリクトを抱えていることや、日本と台湾では家事の位置づけや担い手にかなりの違いが見られることなどである。台湾では、女性の労働力化が日本以上に急速に進む一方、公的な乳児保育サービスの整備が遅れており、祖父母による私的保育への依存と、日本以上に急速な少子化の進展をもたらしている。これらの知見は、福祉国家の十分な支えなしに進む個人化が持続可能でないことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『福祉国家のワークライフバランス効果(2)働く母親の経験をめぐる日台比較』と題する全209頁の報告書を刊行できたことと、国際学会報告や学術論文執筆に向けた目途が立ってきたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
聞き取り内容の分析を精緻化するとともに、統計分析や先行研究とも突き合わせ、国際学会報告や学術論文執筆に向けて準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年8月に名古屋大学で第14回東アジア社会政策会議を主催した。その準備のため他の国際学会への参加を見送らざるを得なかった。また、東アジア社会政策会議への参加には交通費・宿泊費がかからなかった。これらの事情から旅費に残額が生じた。2018年度は国際学会での報告が当初計画よりも多くなる見込みなので、その旅費に充てたい。
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