前年度までの名古屋と台湾(台北と台中)における聞き取りデータを体系的に分析し、統計分析と突き合わせることで、福祉国家がワークライフバランス(仕事と子育ての両立)に及ぼす効果を浮き彫りにすることができた。その成果を、カナダ・トロントで開催された第19回世界社会学会(2018年7月16日)で発表したほか、名古屋大学で開催された第20回社会政治研究会(2018年11月30日)でも報告した。現在は、学術雑誌への投稿に向けて準備しているところである。 上記学会で報告した内容の要旨は以下の通りである。子育て世帯のワークライフバランスをめぐる経験は、労働市場、福祉国家、文化といったマクロな要因にどのように条件づけられているだろうか。日本と台湾の統計とインタビューの分析から、福祉国家がワークライフバランスやその結果としての出生率に大きな影響を及ぼしていることを示したい。台湾では十分な保育サービスなしに女性の労働力化が進んでおり、それが少子化につながっている。福祉国家の支えなき個人化は持続不可能である。具体的には、①労働市場(労働時間)と福祉国家(保育サービス)は、ワークライフバランスと出生率に影響を及ぼす。②福祉国家(育児休業)は、労働市場のタイプによって異なる効果をもたらす。③福祉国家(保育サービス)は、祖母による孫育てを抑制するのではなく促進する。④文化(外食をどのように利用するか)も部分的に関連する、などの点が明らかになった。
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