研究課題/領域番号 |
16K04070
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
魁生 由美子 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (70331858)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多文化地域 / コミュニティ・ケア |
研究実績の概要 |
2016年度は、大阪市生野区において在日コリアン高齢者を対象とするデイサービス事業を中心としつつ、障がい者のための美術教室および韓国語教室、そして地域の社会福祉協議会との協同によるまちづくり事業を展開するNPO法人聖公会生野センターに関する現地調査を行った。これは「超高齢社会における福祉ネットワークの研究-日韓比較からみる市民的協同のあり方-」(研究課題/領域番号22530561)で行った調査研究の一部を発展的に引き継ぐ調査課題である。文献・資料を計画どおり収集し、適時文献調査を行った。 現地調査においては、同法人が行っている多岐にわたる地域福祉活動に関する資料を収集するとともに、代表者から聞き取り調査を行った。同法人の地域福祉事業の端緒は、2004年に開始した昼食サービスを主とした在日コリアン高齢者ミニデイサービス「のりばん」である。ニーズに即応する形で現在は回数を増やし、週3回の事業を行っている。公的資金のない自主事業が10年以上続いていることになる。なぜそのような地域生活に密着したサービスが必要とされ、継続してきたのか、自治体が公表しているデータを参照しつつ、大阪市生野区における在日コリアン高齢者が直面している生活課題について整理を行った。 調査研究の中間報告を行うために、平成29年度、日本社会福祉学会と韓国社会福祉学会の交流事業の一環として開催される韓国社会福祉学会セッションの報告者派遣に応募し、2016年12月に採択の通知を受けた。報告題目「地域福祉の多機能化と連携に関する事例研究―在日コリアン高齢者のデイサービスから展開するコミュニティ・ケア―」の要旨および報告原稿を日本語及び韓国語で作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3か年の研究計画の1年目にあたる平成28(2016)年度に、調査対象とする組織・団体とそれぞれのキーパーソンに協力の承諾をいただき、現地の直近の動向に関する情報と資料を提供していただいた。 平成28(2016)年8月、韓国全羅北道茂朱において私立プルンクム高等学校を中心とした地域づくりを行う活動について見学し、キーパーソンからの聞き取り調査を行った。韓国における生協運動を含めた諸活動と日本国内の諸活動が、教会関係者、市民運動の担い手等を接点として連綿とつながっていることがわかった。 当初、平成29(2017)年度後半に予定していた研究の進捗に関する中間報告が、年度前半早々の4月になった。これにより、予定していた調査を行う以前の段階の成果を公表したことになる。ただし韓国社会福祉学会で発表の機会を得たことで、日韓の研究者からの質疑に応答し、助言ををいただき、今後の調査課題と、用語・概念について整理が必要な点が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29(2017)年度においては、昭和63(1988)年の開設から30年を迎える特別養護老人ホーム園田苑を訪問する。在日コリアン、沖縄・奄美出身者等、多様な文化的背景を持つ高齢者に対応する多文化福祉と地域貢献を行ってきた園田苑の直近の動向を把握する。園田苑の福祉実践に共鳴して事業を開始した施設が国内外に複数存在するが、具体的な訪問先については、園田苑のキーパーソンの助言を得て選択する予定である。 韓国における多機能化する地域福祉事業の現状について、ソウルおよび釜山の協力施設を対象として現地調査を行う。いずれも特別養護老人ホーム園田苑をはじめとして、日本国内の諸施設と研修や交流事業で密接な関係を維持している。 平成29(2017)年4月に行った韓国社会福祉学会における報告原稿を加筆・修正し、学会誌等に投稿を行う予定である。
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