本研究課題では,メッシュデータにもとづく都市地域区分(meshed data based Urban Area: mdbUA)を日本全国を対象に設定し,日本都市の趨勢を明らかにすることを課題とした.初年度にはそれまでに一部の地域で試行した区分の仕方を全国規模に拡大適用し,そこでの課題を発見し,調整・確認することで,結果として2010年時点で全国118の都市地域を区分することに成功した(全国版mdbUA2010).そのうえで,次年度にかけて世界測地系のデータを用いて1995年,2000年,2005年,2010年の4時点での人口の推移を確認し,バブル崩壊以降の日本の都市において,全国レベルにおける太平洋ベルト地帯への集中と,各地方ごとでの大都市地域への集中という二重の意味での集中が進んでいることが明らかになった. さらに,最終年度においては,より長期の趨勢を明らかにするために,1970年から2005年までの5年おきのデータを利用できる日本測地系のデータを用いた分析を試みた.結果として,次のような人口推移のパタンをもつ都市地域が区分できた.継続的に人口が増え続けている拡大都市(46),若干の増減を含めて一定水準の人口を維持している持続都市(27),90年代以降にそれまで継続的に増加していた人口が停滞し始めた停滞転化都市(15),80年代以降に人口が増加から減少に転じた縮小転化都市(19),70年以降人口が減少し続けている縮小都市(11)の5つである.基本的には世界測地系での分析と矛盾しないが,停滞転化都市が東京大都市圏の周辺に多く見られることが新しい発見であった.これが東京大都市圏の成長力の陰りを意味するのかどうかは,今後の課題である. なお,以上の分析結果の詳細と都市地域区分のデータセットは,すべてウェブサイトで公開している.最終年度にはその英語版も作成し,公開している.
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