本研究は、企業の男女平等・両立支援制度等と個人の働き方・世帯内での家事・生活時間配分との関連を検討している。使用したデータは「仕事と家庭の両立支援にかかわる調査 2006(労働政策研究・研修機構)」である。分析結果から、男性の働き方の改革を促進する施策は従業員の企業への高いコミットメントと関連しているほか、男性の世帯でのより積極的な労働分担や生活時間と関連していること等が示された。男性稼ぎ主型就業環境の変革を志向する施策は、女性のみならず男性にとっても生活のあり方を左右する重要な要因になっていることを示唆する。仕事と家庭責任の両立の困難が指摘される中、しばしば女性を対象に両立支援の拡充が議論されてきたが、女性を暗黙と対象とした施策は職場の変革には不十分であり、男性を含めたすべての就業者のワーク・ライフ・バランスを念頭に置いた施策が重要であることが示された。 2018年度は分析結果を国内外の学会等で報告した。企業の男女平等・両立支援施策と家事との関連を検討した分析結果はアメリカ社会学会大会で報告した。また、就業環境と配偶者と過ごす時間との関連を検討した分析結果は日本家族社会学会第28回大会にて報告した。既婚男性の就業環境と家事分担との関連についてパネルデータを用いて補完的に検討した研究成果は、不破(2019)に収録されている。さらにライフイベントが家事労働に与える影響を検討した論文(柳下・不破2019)は、家族社会学研究に掲載される予定である。
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