本研究の最終年度にあたる2019年度は、静岡県内を中心に東海地方のフィリピン人集住地区の調査を継続した。同時に、彼らが出身地から日本へと渡る移住のプロセスとその過程での相互扶助の在り方についても研究を深めることができた。 その結果、出身国と問わず日系人労働者に共通する課題は「労働者としての研修を受けないままの来日」と「日本語学習や安定的雇用を得るための訓練が任意となること」が原因で、彼(女)らが非正規雇用を継続せざるを得ないこと、彼(女)らが「雇用の調整弁」であり続け、将来的には技能実習生や特定技能の労働者にその雇用を奪われる可能性さえあること、フィリピン人は民族学校がないため子どもの日本語習得と教育機会の確保が鍵であることを指摘した。 一方、フィリピン日系人の強みは拡大家族の相互扶助を行えることにある。彼(女)らは非正規雇用で比較的低賃金で働いているのは事実なのだが、出身地と同様に日本においても親族で近居し、子どもを預けあったり、複数世帯が同居することで、生活の質を高め、母国に残してきた親族に送金をすることが可能となっている。中には、日本で戸建て住宅を購入している世帯もある。いわば、母国での相互扶助的生活様式をセーフティネットとして日本においても実践し続け、自らを守っている。 これらの知見をもとに、2019年度は研究成果として論文(依頼原稿)1本、研究ノート1本を刊行したほか、本研究から得られた知見をもとに、国際学会で2回(韓国およびフィリピン、いずれも英語での報告)、国内学会で3回、報告を行った。
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