近年の地域福祉政策は、地域包括ケアシステム推進を基盤としてきた。2011年に改正され、2012年4月から施行された介護保険法でも明記されたように、福祉政策上中心的な位置を占めるようになっている。この地域包括ケアシステムの発展バージョンとして、2016年に設置された「我が事・丸ごと」地域社会実現本部を中心に、「地域共生社会」をキーワードとした諸政策が打ち出されている。2017年に改正された社会福祉法第4条では、地域住民が、地域の福祉団体と連携して地域生活課題を解決することによって地域福祉を推進することが求められるようになった。孤立や防災などに限らず、地域福祉分野を中心とした多くの生活課題を、地域住民の参加によって解決する力を高めることが要請され、これに対応する地域社会のしくみづくりが求められている状況である。これは、地域福祉からのコミュニティ政策と見ることができ、地域コミュニティ形成に大きな影響を及ぼしつつある。 しかし、ソーシャル・キャピタルの基盤が乏しいような、その意味では「強み」に欠けた、ストレングスを見出すことが困難な条件のもとで、地域コミュニティ形成はどのような形で可能なのだろうか。本研究では、この課題に対して、「地域共生社会」を推進する福祉政策の影響のもとで、コミュニティソーシャルワーカーの実践による地域コミュニティ形成に注目する。「地域共生社会」推進施策と、そのモデルのひとつとなった愛知県長久手市の事例分析から、この課題にアプローチしたい。まずは、その前提となる近年の地域福祉政策の動向から確認し、地域包括ケアシステム⇒地域共生社会という枠組みのもとでの、地域コミュニティ形成を明らかにした。
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