本研究は、日本の主要大都市圏で1990年代後半以降進行している「再都市化」のもとで、どのような都市問題が顕在化し、社会的な課題を発生させているのかを明らかにし、「都市化」段階で進められた都市問題の社会学的研究を、今日の現実に見合うものへと更新しようとするものである。最終年度となる本年度は、研究成果の公表を集中的におこなうとともに、次期プロジェクトへの展開を念頭に置いた研究活動に取り組んだ。 研究成果の公表としては、大阪圏の「再都市化」に関する研究図書として、本研究の研究代表者と分担者が共編著者となった『さまよえる大都市・大阪―「都心回帰」とコミュニティ』(鯵坂学・西村雄郎・丸山真央・徳田剛編、東信堂)を公刊した。この公刊に伴って、同志社大学人文科学部研究所や大阪市立大学などのセミナー・研究会で研究報告の機会を得た。 このほか、早稲田社会学会の大会シンポジウムでの研究報告および同学会のジャーナルへの特集論文への寄稿、日本建築学会のウェブマガジンへの研究論文の寄稿などもおこなった。東京都政に関する一般書にも寄稿した。 本研究は今後、都市成長と都市問題を適切に管理する大都市圏ガバナンスのあり方を探る研究に展開させる予定であり、その中では、韓国、中国等東アジアの主要大都市圏との比較研究も考えている。そこで、韓国・釜山大都市圏、中国・上海大都市圏(揚子江デルタ大都市圏)を対象に、現地の研究者の協力も得ながら、地元政府や関係団体等へのインタビュー調査を実施した。また地元大学では、本研究の知見に関して、都市社会学や都市行政学の研究者と意見交換の機会も得た。
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