本研究は「常習性の災害」と「一回性の災害」の伝承のあり方について比較考察した。考察の結果、災害伝承は再来の確信次第によって増減・多様化し、災害文化の形成に作用することが明らかとなった。特に1960年のチリ地震津波を「一回性の災害」として被災した沖縄県名護市では、三陸地方のようにその後の再来に備えるような災害文化の醸成はみられなかった。しかし福島第一原発事故を「一回性の災害」として被災した福島県飯舘村、葛尾村の畜産農家らは、彼らの畜産文化が災害文化をむしろ包括するかのように被災状況を克服した。つまり、日々の畜産農家間の共助が原発事故発災時から避難生活中の畜産を6年もの間可能としていた。
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