研究課題/領域番号 |
16K04094
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
塩原 良和 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (80411693)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 移民 / 先住民族 / シティズンシップ / 多文化主義 / 排外主義 / 分断 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代の社会変動がもたらす国民国家のシティズンシップの変容をエスニック・マイノリティとマジョリティ国民の関係性の変化という視点から考察することで、日本を含む先進諸国における多民族・多文化共生の社会学的研究に貢献することを目指す。具体的には、移民、難民・庇護申請者、先住民族が国民国家のシティズンシップへと包摂されるあり方がグローバル化と新自由主義の影響によってどのように変容しているのかを、日本とオーストラリアにおける社会学的現地調査と国際比較分析によって明らかにする。 以上の目的に基づいて、2018年度もオーストラリアでの現地調査を3回、計3週間ほど実施した。現地におけるミドルクラス移民の社会的編入のあり方を把握するために、日本人永住者のコミュニティ活動の指導者や現地で永住する日本人ジャーナリストや研究者への聞き取りを行った。またかれらの行っているコミュニティ活動への参与観察を行った。またオーストラリアの移民・多文化主義政策に詳しい現地大学の研究者との意見交換を行った。オーストラリア国立図書館やNSW州立図書館での資料収集も行い、成果を得た。 これらの調査を反映させ、オーストラリアと日本におけるエスニック・マイノリティのシティズンシップのあり方と社会的分断・排外主義の関係についての分析を行い、その中間成果を2つの学会での招待講演、3つのシンポジウムでの招待講演(ひとつは英語)で発表した。その内容は1つの学術論文として年度内に刊行されたほか、2019年度に英文の複数の雑誌に投稿する予定である。このように、2018年度も充実した調査と研究成果の発表を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の調査計画からは、全体構想や調査実施の順番などで若干の変更があるが、概ね予定どおりに推移している。また後述のように、最終年度である2019年度に向けて、研究成果をまとまった形で公表する準備も着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は最終年度であり、これまでの調査で得られた知見を再検討し、補足調査を行いつつ整理・一般化することで、理論的枠組みを構築する。そして、その成果を公表するための準備作業を行う。 現在、英語圏の社会科学系の著名な出版社であるSage社とRoutledge社から、研究代表者を第一編者とする編著書の刊行作業を進めている。前者は、日本をはじめとするアジア各国の移民政策と移民の社会統合のあり方を比較検討した論集であり、後者は、若手・中堅の日本人研究者の業績を英語で発信することも意図した、現代日本の排外主義を多様な角度から分析した論集である。特に後者には、研究代表者の問題意識と理論的枠組みが全体に色濃く反映されており、研究代表者自身が寄稿した章も収録予定である。 またこれとは別に、多文化社会としてのオーストラリアのあり方を考察した日本語での編著書にも、編者として加わっており、やはり2019年度中に刊行予定である。これは大学生向け入門書の体裁をとっているが、ある程度高度な内容を目指しており、大学院生が研究に参照することが可能なものとなる予定である。ここでも研究代表者は、本科研研究の成果を反映させた章を執筆している。 さらにこれらとは別に、本研究の成果に全面的に依拠した単著を構想しており、2020年度以降、本格的に執筆にとりかかる予定である。以上のように、研究最終年度に向けた成果のまとめと公表の準備は着実に進んでいる。
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