本研究は、現代の社会変動がもたらす国民国家のシティズンシップの変容をエスニック・マイノリティとマジョリティ国民の関係性の変化という視点から考察することで、日本を含む先進諸国における多民族・多文化共生の社会学的研究に貢献することを目指した。具体的には、移民、難民・庇護申請者、先住民族が国民国家のシティズンシップへと包摂されるあり方がグローバル化と新自由主義の影響によってどのように変容しているのかを、日本とオーストラリアにおける社会学的現地調査と国際比較分析によって明らかにすることを試みた。 最終年度である2019年度には、研究の成果を6月のオーストラリア学会30周年国際大会、7月のオランダでのICAS国際大会において英語で報告した。また昨年度までの調査のフォローアップとして、9月にはシドニーにおける聞き取り調査も実施した。さらに研究成果公開の一環として、Routledge社より英語の編著書(筆頭編者)、また法律文化社より日本語の編著書を、いずれも所収論考を含めて刊行した。2020年度には、Sage社よりもうひとつの英語の編著書(筆頭編者)も刊行されることが確定している。このほか、国際学術雑誌IJJSにて英文の査読付論文を刊行するなど、十分な研究成果発信を行うことができた。 本研究の実施期間のあいだ、移民・難民をめぐる国内外の情勢や政策、排外主義の動向は大きく展開してきた。本研究ではそうした直近の変化を踏まえた分析を行い、それを国内外に広く発信することで、研究の進展と研究交流の発展に貢献することができた。
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