内閣府「親と子の生活意識に関する調査」、日本家族社会学会「全国家族調査」などの大規模データを用いて、貧困・低所得層出身の人たちのライフコースの計量分析を行った。同時に、40・50代で未婚の低所得層の人々にとくに視点をあて、これらの人々の価値観や態度、とくに家族についての意見・態度、実親との相互作用状況について分析をおこなった。まず、一時点的なデータでは貧困・低所得層の指標は母子世帯などの家族構造などによって把握せざるを得ないが、同じ母子世帯でも母親の学歴による差異は大きく、高学歴の母親の子は母子世帯であっても教育達成やアスピレーションは必ずしも低くないのに対して、低学歴の母親の子の場合にはその逆の傾向がみられた。貧困・低所得の世代的再生産は子の学歴達成を媒介として生じるが、そこには家庭内での親子関係のあり方、教育的なかかわりが重要な意味をもつ。 また、中年期の未婚者については、基本的には親から援助をしてもらうよりも親への援助のほうが多いこと、これらを反映してか家族に関してはきわめて伝統的で保守的な価値観を維持しており、老親の扶養や介護に関しては通常以上に保守的な傾向が示された。このことは、未婚化が進展し、高齢母子世帯や単独世帯が増加しても、それが脱家族のような方向にはむかわず、むしろ非常に家族主義的な傾向を強めるというあまり予測しなかった方向である。 これらの成果は、とくに2018年度日本社会学会大会シンポジウムで報告を行ったほか、現在投稿論文を作成中である。また、この成果は放送大学のテキスト(田間泰子編、リスク社会の家族変動)に分担執筆分としても発表予定である。 また、このテーマに近い指導学生も研究協力者として本研究に参加した。
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