研究課題/領域番号 |
16K04096
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
池田 理知子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50276440)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コミュニケーション / メディア / マンガ / 語り部 / 解説員 / 展示 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、公害資料館を「メディアミックス」実践の場と捉え、さまざまなメディアが何をどのように伝えているのか、それらが相互にどのような影響を与えあうのかを四日市公害の資料館である「四日市公害と環境未来館」を例に取り上げて検証することである。 2016年度は、四日市公害マンガ『ソラノイト―少女をおそった灰色の空』の四日市での受容を中心に研究を進めていった。資料館でのマンガの展示は実現しなかったものの、このマンガを収録した書籍『空の青さはひとつだけ―マンガがつなぐ四日市公害』を研究代表者が編集・出版したことで、資料館売店や、資料館および四日市市内の図書館に置かれることになった。そのため、資料館を訪れる多数の小中学生の目に触れることとなり、夏休みの自由研究で引用されたりした。例えば「第36回三泗小中学校社会科作品展」では、四日市公害を扱ったものが31あり、7つの研究でこの本が参考文献に引用されていた。また、小学5年生の社会科の授業で四日市公害のことを教える教師2名がこのマンガを使って授業を行っていることも、フィールド・ワークのなかで明らかになった。マンガが若い世代に公害のことを伝えるメディアとしての可能性を秘めていること、それが小学校の授業内容の検証から実証されたことを水俣市で行われた第12回水俣病事件研究交流集会で成果として発表した。四日市市内の生徒が野外実習で資料館の見学に出かけていることに鑑み、今後もマンガと資料館という二つのメディアの関係についてみていく必要があると考える。 また、四日市の公害資料館は博物館と一体化しているという特徴に着目し、二つの異なる性質のミュージアムがどのような相互作用をもたらしているかについても検証した。こうした二つのメディアがあることで、戦争と公害の連続性を来館者に伝えうることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、四日市公害マンガ『ソラノイト―少女をおそった灰色の空』の公害を伝えるメディアとしての可能性については順調に研究が進んでいる。マンガそのものの資料館での展示は実現しなかったものの、資料館の売店や図書館にはこのマンガが収録された本が置いてあり、本と資料館という二つのメディアの相互作用を分析するには不足のない状況だと思う。ただし、このマンガの英訳と、英語版が資料館の来館者に与えるインパクトについては次年度以降の課題となった。 資料館の展示の分析と考察は、概ね予定通り推移しており、成果も上がっている。 また、語り部と解説員に関するフィールド・ワークと面接調査も、初年度としては、ほぼ順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
四日市公害マンガ『ソラノイト―少女をおそった灰色の空』を使って授業を行うことと、資料館の見学がどのような連動性をもっているのかを、授業を行っている先生たちへの面接調査から明らかにしていく。また、初年度にやり残したマンガの英訳とその資料館来館者への影響力についての検証も行っていく。さらに、語り部と解説員に関するフィールド・ワークと面接調査、展示の分析も引き続き実施する。 研究の成果発表も積極的に行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
1万円強の残額のため、無理に使用せず次年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の書籍購入代の一部に充当する。
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