本研究は、公害資料館を「メディアミックス」実践の場と捉え、様々なメディアが何をどのように伝えているのか、それらがどういった相乗効果を生みだしているのかを検証するものである。1年の延長申請をして認められた2019年度は、2018年度に開催したシンポジウムの報告書をまとめることに集中した。これで、2016年度から行ってきたこの研究に一区切りつけることができたと考えている。 シンポジウムの報告書には、以下の内容が収録されている。「四日市公害と環境未来館」で語り部および解説員をしている伊藤三男の講演「四日市公害を伝える資料館の役割」と、四日市市の小学校で公害教育に取り組む早川寛司の授業実践の報告を研究代表者がまとめた「マンガ『ソラノイト』で学ぶ四日市公害」、福岡県太宰府市の小学校で公害マンガを使って四日市公害を学ぶ授業をしている伊﨑優太朗の実践報告「太宰府市の小学校での四日市公害授業実践」、研究代表者の司会のもとに前述の3人に参加してもらったパネルディスカッションの報告「パネルディスカッション」、来場者へのアンケートからの抜粋である「来場者アンケートから」、シンポジウムと同時開催した写真展の報告「四日市公害写真展」。公害教育の現場において、公害資料館と公害マンガという二つのメディアがどのような相乗効果を発揮しているのかが模擬授業や実践報告を通してわかるような内容・構成になっている。 報告書は、主として小学校の教師に配布した。福岡市および近隣の小学校の教師、また前述の早川を通して、他県の小学校の教師の手に届けた。報告書に対する評価も何人かの教師からはフィードバックしてもらい、授業運営の参考になったとの意見が多かった。このように報告書の作成および教育現場への配布は、本研究の成果発表と同時に公害学習を考えるうえでの参考になったものと思われる。
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