研究課題/領域番号 |
16K04097
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
廣瀬 毅士 駒澤大学, GMSラボラトリ, 研究員 (20571235)
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研究分担者 |
間々田 孝夫 立教大学, 社会学部, 教授 (10143869)
水原 俊博 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (10409542)
川西 重忠 桜美林大学, 経済・経営学系, 教授 (30383540) [辞退]
寺島 拓幸 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (30515705)
野尻 洋平 名古屋学院大学, 現代社会学部, 講師 (40713441)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会学 / 消費社会論 / 社会的消費 / リスク / 消費意識 / 消費文化 / 社会調査 / 統計調査 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究では、中国という東アジアの経済大国の先進都市における消費文化・消費意識の諸相を実証的に解明すべく、上海市・北京市の2都市において大規模な統計的社会調査による経験的データを収集して実証的な分析を行った。 実査に先立っては研究組織のメンバーが所属する都内の大学において複数回の研究会を開催し、研究計画に沿った研究活動を進めた。具体的には(1)文献研究を通じた調査枠組みの再検討、(2)26年度に立教大学の学内研究費を用いて実施した中国での予備調査データの再分析を行い、本研究計画で実施する本格的な統計的調査の調査課題を改善した。あわせて(3)研究組織のメンバーが一部共通している日本の消費社会に関わる研究課題が実施した東京圏での統計的社会調査のデータ分析と研究報告を行って日中消費社会の相同と相異を検討し、(4)他の国際比較調査などの調査枠組や質問項目を検討し、本調査研究での質問項目を確定した。 上述の文献研究、および東京圏調査や他の国際比較調査との比較検討を通じて本研究課題における統計調査に向けて質問項目等を検討を重ね、29年10月~11月には中国上海市および北京市において大規模な統計的社会調査を実施した。実査のデータ収集方法はWeb調査によって行い、消費の多様化や質的高度化に関連する消費意識について幅広く測定を行った。29年12月に分析データが最終確定したことを受け、30年3月には速報論文を執筆した。また、日中比較分析のための準備として、東京圏調査を踏まえた学会報告と論文投稿を行った。 30年度は上述の調査対象地域において現地確認のフィールド調査を行ってデータ分析結果の解釈の深化をねらいつつ、さらなる詳細なデータ分析を行って学会報告、論文投稿、研究成果報告書の作成を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は中国における大規模な統計調査の準備を進め実施する年と位置付けていたが、順調に計画通りの研究活動を遂行することができた。 具体的な活動としては研究組織のメンバーが所属する大学において研究会を複数回開催し、(1)文献研究を通じた調査枠組みの再検討、(2)26年度に立教大学の学内研究費を用いて実施した中国での予備調査データの再分析、(3)研究組織のメンバーが一部共通している日本の消費社会に関わる研究課題(課題番号16H03701)が28年に実施した東京圏調査の分析結果報告を行って日中消費社会の相同と相異を検討した。さらに(4)他の国際比較調査などの調査枠組や質問項目を検討し、本調査研究での質問項目を確定した。もちろん現地語版の質問文・選択肢のワーディングが学術的かつ現地語として自然なものとなるよう、在日の中国人留学生に対するプリテスト、研究協力者である現地の中国人研究者のチェック、および調査委託機関との入念な打ち合わせを重ねた。 調査の開始時期は当初の研究計画通りに10月とした。当初の研究計画では実査方法を集落抽出としていたが、現地のインターネット利用の一般化と利用者の急激な増加を背景に、また集落抽出では捕捉しづらい属性を有する調査対象者への調査も可能なweb調査によって行うこととした。もちろん当初の研究計画から調査項目には変更がなく、消費の多様化や質的高度化に関連する消費意識(消費主義的な消費態度、環境配慮や健康リスクに対応した消費態度、自国の伝統文化への関心、脱物質主義的な価値意識)について幅広く測定を行った。調査対象地域は当初計画では上海市のみとしていたが、中国や上海の消費意識をより深く理解するための比較対象として北京市での調査も行った。 29年度末には、研究代表者が速報的なデータ分析結果を紀要論文誌に投稿して公刊されたが、これも当初計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
既に平成29年度に研究代表者が速報的なデータ分析結果を紀要論文誌に投稿し公刊されたが、30年度は前年度に実施した中国上海市・北京市での統計調査に対してのより詳細なデータ分析と複数の学会における研究報告、研究論文の執筆と学会論文誌への投稿、研究課題全体のまとめを通じた研究成果報告書の作成を行う。 具体的には、30年度の日本社会学会大会において研究代表者・分担者ら4名が連携して研究報告を行う予定であり、また同じく30年度の経済社会学会全国大会において、研究代表者がコーディネーターとなってラウンドテーブル形式の特別セッションを開催し、研究成果を公表する。また、これらデータ分析に基づく研究とともに、調査対象地域における現地確認のフィールド調査をおこなって調査結果の解釈をリアリティあるものとする深化をねらい、学会報告内容を踏まえて『経済社会学会年報』など学会論文誌への論文投稿を研究組織メンバーによって行う。 さらに、日本の消費社会研究と連携した日中比較分析として、基盤研究(B)「社会的消費・質的高度化・消費主義の視点から見る21世紀消費社会の調査研究」(課題番号:16H03701)と連携することで中国の消費社会と日本の消費社会の比較分析を行い、グローバル化時代の消費社会の様相をより立体的に把握していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究計画では29年度に代表者と分担者が中国に渡航して現地大学の中国人研究者と合同研究会を行うことになっていた。しかし現地研究者の本務先都合が変化したこと、また合同研究会を開催する目的の一部についてはインターネットを利用したビデオ・カンファレンスによって達成可能であることからこれをもって代替し、研究分担者2名が現地渡航して打ち合わせを行った。 また統計調査を委託する調査機関について、日本法人と現地機関との間に緊密な連携が取れていると確認できたことから研究代表者が渡航を行う必要性が薄れた。よって実査準備そのもののために現地渡航するより、調査後に対象地区で確認のためのフィールド調査を行う方が、精度の高い研究を実現ならしめると研究組織として判断し、次年度使用とすることにした。 (使用計画)統計調査におけるデータ収集は、もっぱら定型化された調査票および調査設問においてのみ行われる。よってデータ分析結果の解釈をリアリティあるものにして精度の高い研究とすべく、統計調査の対象2都市におもむいてフィールド調査を行い、消費実態の確認をする。具体的には30年度の5月に研究代表者・研究分担者が中国へ渡航し調査対象都市である北京市において現地確認のフィールド調査を行う。さらにデータ分析を踏まえた学会大会での研究報告を終えた後、研究論文の執筆作成時期にあたる秋~冬に対象都市へのフィールド調査を行う。
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