研究実績の概要 |
本研究は日本の皮革づくり(特になめし業)に携わる集団におけるパラダイムシフトを研究するためにおこなっているが、20世紀後半から加速されている産業のグローバル化に対応するための方策を皮革づくり集団の人々とともに考えることが目的でもあった。このため、本年度は昨年度に続き、一般の人々に対して皮革づくり集団のプロフェッショナルアイデンティティについての知識を与えるため、日本および世界の皮革づくりの伝統についての啓蒙と教育をおこなった。さ2018年度上半期には一般向けの「皮革の文化史」が刊行予定であるが、これは2017年3月に出版された「革をつくる人々」と連動した一般むけの著作である。 2017年9月に英国ノースハンプトン大学皮革研究所,Archaeological Group of Leather, Leathersellers' Guildとの共同研究で招待講演としてThe Enigma of Japanese Leather'と題する講演をおこなった。英国を中心に、皮革専門家の間では日本の伝統的な皮革づくりが高い関心を呼び起こしていることが理解された。 当該研究講演には日本から兵庫県たつの市のNPO法人Tatsuno Leaterの理事長および理事ら4名が参加し、本研究を通して日本の皮革づくりの若い世代と英国の研究者らの国際交流がおこなわれた。本講演は‘The Enigma of Japanese leather’, in ARCHAEOLOGICAL LEATHER GROUP, NEWSLETTER, No. 47, Mar.2018, として報告された。 国内では2018年2月に台東区立皮革博物館において「世界の皮革ビジネスと日本の革の独自性」と題する講演を皮革の専門家にむけておこなった。現在岩波書店から刊行予定の「皮革の文化史」を執筆中であり、本年度前半期に出版の予定でる。さらに本年度は英国における学会専門誌への英語での発表原稿を準備中である。皮革の文化史においては皮革ビジネスがどのようにグローバル文化のなかで機能しているかを論じた。
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