2019年度は、ヤングケアラーとは何かを子どもに伝えるための寸劇を、地域の実情に合わせて精緻化することを試みた。具体的には、イギリスの学校で実際に使われている寸劇を南魚沼市の状況に合わせて作り直し、その脚本を、元ヤングケアラーや小学校の元校長先生、南魚沼市教育委員会や家庭教育支援チームの方々と検討した。ただ、その結果明らかになったのは、現在の日本の状況では、ヤングケアラーとは何かを伝えるツールとして学校で寸劇を子ども向けに上演することは難しいという点であった。劇の上演を受けて、子どもや保護者からの問い合わせがあった場合、各学校ではそれに対応できるだけの準備ができていない上、劇という方法はイギリスの学校で成果を挙げているほど日本の学校には馴染まないのではないかという指摘もなされた。また、元ヤングケアラーたちからは、こうした劇があったとしても、学校で自分がヤングケアラーであることを相談することは難しいとの声があった。 それを受けて、2019年度後半は、子ども向けのヤングケアラー啓蒙ツールとして、児童書の作成を目指す方向に転換した。また、イギリスの学校においてヤングケアラーへのサポートがどう展開されてきたのかについて、チャリティ団体「チルドレンズ・ソサイエティ」のヘレン・リードビター氏を招いて研修会を行い、「ヤングケアラーサポート学校賞」などの取り組みを通して学校での支援が段階的に充実されていった経緯を学んだ。この研修会では、南魚沼市での支援のあり方についての情報も共有し、グループワークでは、元ヤングケアラーやスクールソーシャルワーカー、医師、ジャーナリスト、研究者、行政職員、議員、教育関係者などが、それぞれの立場から意見を交換した。
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