本研究は、地域医療の中核を担う急性期病院において、看護職を中心とした複数の医療従事者たちが、どのような協働実践を通じて、患者へのケアを成し遂げているのかについて、明らかにすることを目的とする。H30年度は、入退院支援関連部門および地域医療連携部門での調査を開始し、説明外来および訪問看護でのフィールドワークと、入院を予定する患者への説明場面や訪問看護のためのカンファレンス場面の録画、及び看護師へのインタビューを行った。また、H28年度から継続して行っていた救命救急センターにおける調査のフィードバックなども行った。 救命救急センターでの調査の結果の一部については分析を行っており、日本保健医療社会学会大会、Australasian Institute for Ethnomethodology and Conversation Analysis 2018 Conference等で報告した。これらの研究においては、看護師たちの協働実践を分析することで、救急外来から病棟への患者の移動がどのような時間的・空間的な編成のもとに適切になされているのかを明らかにした。とりわけ、複数の患者が移動してくる際のそれぞれの時間の流れを協調させ、それぞれの患者を適切なベッドへとマッチングしていく協働的な方法を明らかにした。また、病棟へと入院してくる患者たちの状態の変化に応じた看護師の働きかけによって、どのようにコミュニケーションが成し遂げられているのかについても、明らかにした。 また、これまで継続されてきた調査研究については、その方法論的な含意についても、日本保健医療社会学会や関東社会学会等にて、報告を行うことができた。これらも合わせて、急性期病院における協働実践に参加する人たちがケアを行う際に用いている「人びとの方法論」の一端を明らかにした。
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