最終年度は、前年度に実施したフィリピンでの研究調査を検証し成果報告書にまとめるために、研究協力者の4名と研究会を継続的に4回開催した。フィリピンの労働組合法や労働運動についての研究を進め、先に訪問した労働組合にメールで質問するなど情報の収集に努めた結果、労働組合規約などの新たなデータを得た。そこで国内と国外で活発な活動を行っている労働組合の背景にはジェンダーの主流化があることが明らかになったことは移住女性労働者のシティズンシップ研究にとって重要である。またこれまでのインタビュー協力者との交流を継続し、東京のフィリピン出身の家事労働者に関する聴き取りを行った。移住労働者をめぐる情勢が大きく変化したことから2018年12月の研究会では研究協力者の弁護士による入管法改正の最新情報の学習会を行った。これらの内容を成果報告書として冊子にまとめ発行したが、これまであまり明らかにされていない送出国フィリピンの労働組合の実情と女性組合員のエンパワーメントに注目したことに意義がある。 研究期間を通して、移住女性労働者の人権確保につながるシティズンシップ論の構築のために、トランスナショナリズムの視角からトランスナショナルなシティズンシップを検討してきた。そのために送出国であるフィリピンの労働組合や政府機関、移住女性支援のNGOを訪問する研究調査を行い、フィリピンの現状や移住政策の背景を現実に即して把握、理解することができた。このことはシティズンシップ論の構築に重要な意味をもつ。移住女性労働者のトランスナショナルなシティズンシップ形成のためにはジェンダーを主流化とする視点が重要であることと労働組合がその形成に大きな役割を果たす可能性があることを明らかにしたことにこの研究の意義がある。
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