2018年度は、科研の最終年度にあたるので、まとめの冊子作成をめざして調査作業を進めた。これまで実施してきた聞き取りをデータとして使用できるよう整理するとともに、収集してきた貴重な資料の解読を進め、新たな地域おこし協力隊の2名の協力を得ながら、補充の聞き取り調査を計画した。また昨年度からお話をうかがっていた逗子在住の郷土史家の男性が体調を崩され入院されたので、見舞いも兼ねて、4月に補充の聞き取りを行った。 6月に最終的な科研調査の成果として、どのような内容の冊子を作るかをめぐり、足尾の行政センターの会議室で、私のほかに調査協力者2名、新たな地域おこし協力隊メンバー2名、それと科研調査に協力していただいている行政関係者が集まり、科研成果をめぐる研究会を行い、編集方針や内容、各執筆者のテーマ、掲載できる写真のリストなどを集中的に議論した。同時に補充の聞き取り調査も実施した。その後、夏休みから秋にかけて、冊子への執筆を予定している者は、原稿執筆に集中し、メールでのやりとりを通して、草稿の検討や相互批判を行い、冊子の完成をめざした。結果的に『ごめんください、足尾のこと聞かせてください!―科研版―』(300頁)を編集し作成することができた。冊子の内容としては、聞き取った内容すべてを反映することは分量が大量であることからも無理であり、調査に携わったメンバー各自の問題関心をもとに論考を執筆した。地域生協「三養会」、定時制高校教員のライフストーリー、地域のお祭りで歌ってきた男性の生活史、シベリアでの戦争体験、国鉄足尾線廃線をめぐる人々の実践、足尾銅山労働者の不当解雇の裁判闘争など、多様な内容の論考をまとめることができ、これまで足尾の生活文化をめぐる聞き取り調査のまとまった成果はなく、今回の冊子は、独自の内容を持ち3年間の科研調査の成果としては、十二分な内容の冊子を作成することができた。
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