クラウドファンディングという事象が、まちづくりや地域活性化の面で果たす役割について、特に地域系クラウドファンディングサイトの運営者、プロジェクト提案者、支援者というそれぞれ異なる立場のアクターを対象に、インタビュー取材、サイトのコンテンツ分析、アンケート調査等の複数の方法で実証的なデータ収集を行った。研究を通じて地域ネットワーク構築や地域活動の可視化・活性化にクラウドファンディングが与える複合的な影響を明らかにすること、また、その成果を踏まえて、地域コミュニティにとってより有効なクラウドファンディング・システムのあり方について提言することを目的とした。本研究の取組は終盤にCovid-19の影響で一部、期間の延長が生じたものの、ほぼ予定通りのデータ収集、分析を行い、成果を挙げることができた。 クラウドファンディングには単純にプロジェクトに対して資金を集めるという活動に留まらず、対人ネットワークを生成、強化する機能があることが確認された。その支援にはサイト運営者の独自のノウハウやエリアについての経験知が重要な役割を果たしていた。またシステムとしてのクラウドファンディングの設計や運営会社のサービス設定の違いが、サイト運営者や提案者の振る舞いや戦略を大きく左右しており、情報システムという人工物と人々の社会的活動が相互に構成しあっていることを実証的に示すことができた。4年の調査期間を設定したことでクラウドファンディングをめぐる全体状況の時間的変化を観察できたことも本研究の大きな特徴である。
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