研究課題/領域番号 |
16K04107
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
西村 純子 明星大学, 人文学部, 教授 (90350280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 女性就業 / 出産・子育て |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、1990年代以降の日本の労働市場と社会政策の動向が、出産・子育て期の女性の就業キャリアにどのような影響を及ぼしてきたかを明らかにすべく、データ分析をおこなった。 1990年代から2010年代初めの、子どもをもつ女性の就業率の変化を末子年齢別にみると、1990年代から2000年代初めにかけて、末子15-17歳の女性の就業率にはそれほど大きな変化が見られない一方で、末子0-2歳の女性の就業率は顕著に増加する傾向が見られた。ここからは、1990年代から2000年代にかけて、出産した女性がより早いタイミングで労働市場に戻っていることが示唆された。 ただし、1990年代以降の経済不況のもとでの非正規雇用者の増加や賃金の伸び悩み、一方で少子化を背景とした育児休業制度をはじめとした子育て支援策の展開といった動向は、出産・子育て期の女性に一様に影響を及ぼすものではない。そこで本研究では、出産後の女性の仕事への戻り方のパターンに注目し、データ分析をおこなった。その結果、以下のことが明らかになった。1)1960年代生まれに比べて、1970・80年代生まれの女性は、出産後早いタイミングで仕事に戻っていること、2)出産後の女性は非正規雇用者として仕事に戻るケースが多いが、正規雇用者として仕事に戻るケースも一定程度あること、3)仕事へ戻るタイミングに注目すると、正規雇用者と非正規雇用者として戻る場合には大きな差異があり、正規雇用者として戻る場合には出産後3~4年以内に戻るケースが大半でそれを過ぎると正規雇用者として戻るケースは、ほどんど見られない一方で、非正規雇用者として戻るケースは、出産後10年をすぎても見られること。こうした出産後の仕事への戻り方のパターンに関して、どのような要因が関連しているか、さらなる検討の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
女性の就業キャリアの分析に関して、先行研究の検討をふまえて、前年度から継続的なデータ分析をおこなうことができた。また、就業キャリアのさらなる分析のための課題設定をおこない、転職の経済的ペナルティに関する先行研究の検討にも着手できたため。
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今後の研究の推進方策 |
出産・育児期の女性の就業キャリアに関して、さらなる分析を進める。また、転職の経済的ペナルティに関するデータ分析をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初海外で出版された書籍をもちいて先行研究の検討を予定していたが、その多くを学術論文をもちいておこなったこと、また、国内学会のうち1件が近接地で開催されたこと、英文校閲に関する費用が発生しなかったこと等による。 平成30年度においては、引き続き海外で書籍として出版されている先行研究の検討を続けるほか、英語での研究成果の発表のための英文校閲にも使用予定である。
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