日本の1960年代から80年代生まれの女性を対象として、出産前の就業形態と出産後の就業状況との関連を、出生コーホートごとに分析したところ、若いコーホートほど出産後間もない時期に就業している割合が高く、その増加の多くは、非正規雇用者の増加であることが明らかになった。こうした出産後間もない時期の非正規雇用者の増加は、同じく出産前後の女性の就業率が大きく低下する韓国では見られていない。 出産後の女性の仕事への戻り方のパターンに注目し、データ分析をおこなった結果、以下のことが明らかになった。1)1960年代生まれに比べて、1970・80年代生まれの女性は、出産後早いタイミングで仕事に戻っている、2)出産後の女性は非正規雇用者として仕事に戻るケースが多いが、正規雇用者として仕事に戻るケースも一定程度ある、3)仕事へ戻るタイミングに注目すると、正規雇用者と非正規雇用者として戻る場合には大きな差異があり、正規雇用者として戻る場合には出産後3~4年以内に戻るケースが大半でそれを過ぎると正規雇用者として戻るケースは、ほとんど見られない一方で、非正規雇用者として戻るケースは、出産後10年をすぎても見られる。 出産・子育て期に離職を経験した女性の、再就職後の賃金について検討したところ、中断前の賃金と比較して、再就職直後の賃金が最も低く、その後再就職からの年数を経るにつれ賃金は上昇する傾向がみられた。再就職後の賃金の低さは、正規雇用に就いているかどうかを考慮してもみられた。ここから、再就職後の女性の賃金の低さには、再就職後に非正規雇用に就く傾向が強いことだけではなく、再就職後の女性が正規雇用のなかでも賃金の面で、より劣位な正規雇用に就く傾向が強いことが関わっていることが示唆された。
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