研究課題/領域番号 |
16K04110
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山本 武利 早稲田大学, 政治経済学術院, 名誉教授 (30098412)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 検閲 / GHQ / 検閲者 / 新聞社 / 郵便 / 電話 |
研究実績の概要 |
発掘した検閲者資料では第Ⅰ区の1945~47年のものがなく、第Ⅱ区にいたっては断片的なものさえ見つかっていないのが現状である。とくにGHQ資料の少ない大阪、名古屋での官庁資料の発掘に注力した。とくに大阪の図書館、資料館を調査するとともに、阪神在住の生存検閲者への訪問、インタビューや郵便・電話での問い合わせを継続的に行った。第Ⅲ区の1945年末の人名録を見つけたが、その他の時期のものは不明である。したがって占領初期のCCD資料に重点的に当たって、その時期の新しい検閲者名簿や関連資料を渉猟した。そのためには国会図書館の所蔵するGHQ資料にあたる必要がある。しかしそのマイクロフィルムは不鮮明であるため、アメリカ国立公文書館の原簿を探索することも第1年度の課題であったが、実現しなかった。その代り 検閲者を監督した日系人のデータをハワイ大学で探した。 検閲者名簿はアルファベット表記であるため、漢字の実名の確定がきわめて困難である。申請者は以前から各種文献とくに回顧録、同窓会名簿、自費出版物などにあたって検閲経験者の記録を収集してきた。また新聞社などに体験者証言をもとめる記事を掲載してもらって、若干の生存者や遺族から情報をえることができた。さらに国会図書館の蔵書検索サイトでアルファベット名を入力して、実名にたどり着くこともできた。こうした試みによってすでに150名を超える実名を確定している。かかる作業は長く継続せねばならないが、とくに3年間である程度の実績を挙げるには、第2年度早々に始める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
こうした仮説の検証は大量の日本人検閲者資料の発掘、分析でもって達成されるだろう。検閲者はGHQの方針に忠実に従うことで、GHQ工作の手先となって行ったとの結論が導かれるかもしれない。いずれにせよこれら仮説を論証するには、一定数以上の検閲者のケーススタディが不可欠である。検閲者研究の従属の度合いは日本人のアメリカ化を測る恰好な研究課題である。 残された数少ない検閲者を探すことと遺族から日記、手紙、記憶などを提供してもらう作業を緊急に行いたい。しかし研究としての客観性を持たせるための最低限の人名をかくてせなばならない緊張感を常に医大いかねばならないと痛感している。 その弱点補強には、私自身が発見し、インターネットwww.npointelligence.com/で公開している占領期検閲者データベースの利用者に呼びかけ、情報交流を図る必要も感じている。GHQの検閲者のアルファベット人名を漢字に転換する地道な作業を継続してゆかねばならない。 資料不足を補うために、新たな問題意識の設定に工夫を行いたい。。
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今後の研究の推進方策 |
検閲者の意識と行動の研究が重要と考える。CCDという検閲機関に敗戦国の国民が参加している彼らの破廉恥意識の度合いを測定せねばならない。新憲法の禁じる通信秘密侵害、言論弾圧への程度への認識度も測定せねばならない。天皇制教育を戦前に受けてきた彼らは、検閲コードへの抵抗度、拒否感はどの程度であったろうか。アメリカへの反発は強まったであろうか。 閉鎖された検閲現場で黙々と働き、給与増額と同僚と競争させられる意識はどうであったか。彼らはその生活意識や水準はどうであったか。大量の検閲作業で心理的、精神的に押しつぶされることはなかったろうか。 こうしたいくつかの仮説を把握し、それらの相関を把握することが今後の研究推進に不可欠と認識している。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費と物品購入費の使用が予想よりも少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内・海外旅費やパソコン購入を計画している。
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