GHQののインテリジェンスや検閲を担っていたのはCCDであった。CCDは秘密機関であったが、その所在の全体像を示す資料を発掘した。多数の日本人検閲者を雇用して、郵便などの通信や新聞などのメディアから収集し、占領初期には戦犯・右翼、後期には共産主義者の追究に活用した。膨大なコメントシートやウオッチリストを作成し、インテリジェンスを解析し、日本統治に役立てた。GHQはその工作によって軍事目的を達成し、政治的には日本への民主主義の導入に役立ったと総括している。 日本人検閲者は自国民への裏切りを恥と、新憲法違反の検閲関与に罪の意識を抱いたが、英語リテラシーの提供の見返りに、高給を得て飢餓を克服していく中で戦後の生活基盤を築き、検閲への抵抗感を減らしていった。CCDは男女、年齢、学歴、職歴を問わず、実力本位で雇用し、管理した。とくに女性を多数採用するだけでなく、DACという管理職に抜擢し、その後の女性の社会進出に大きく貢献した。また高齢の体験者も優遇し、かれらを通じて日本人の意識改革を遂行した。 調査対象者の検閲者は高齢であったため、少数に対象者は限定されたが、調査には協力的で、記憶や資料を惜しみなく提供してくれた。また少ないと思われた彼らの足跡を示す活字や文献は資料館や図書館で発見することができた。科研費を使って訪問した各地の図書館や大学図書館の協力を得て新資料を多数発見した。またアメリカ国立公文書館やメリーランド大学プランゲ文庫なども重要な資料の供給源となった。さらに国立国会図書館憲政資料室からも有益なGHQ資料を獲得した。 「CCDで検閲者だった青春」(検閲者座談会)、「CCD閉鎖とプランゲ文庫の誕生」(論文)を掲載した『Intelligence』20号は最終年度の成果である。
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