研究課題/領域番号 |
16K04114
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
土屋 葉 愛知大学, 文学部, 准教授 (60339538)
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研究分担者 |
時岡 新 金城学院大学, 国際情報学部, 准教授 (30387592)
渡辺 克典 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 准教授 (60509181)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 障害 / 女性 / 差別 / 交差性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「ディスアビリティ」と「ジェンダー」という2つの異なるポジショナリティによって差別状況におかれている集団である、障害のある女性をめぐる複合的な差別構造を明らかにすることである。障害女性をめぐる差別構造については様々な視点から研究がなされてきたが、その蓄積は未だ不十分であり、彼女らが置かれたより複雑な状況を描き出すために、差別の「交差性(intersectionality)」という概念をもちいる。この概念はもともとは黒人女性の雇用をめぐる問題を議論する際に用いられた言葉であるが、人種、性別、社会階層や障害により周縁化された集団の生きられた経験の多重性・多元性を示し、単一的なアイデンティティ政治への批判に応えるものである。 今年度の前半は調査準備期間として「交差性」概念を整理するための研究会を行った。並行して、アイデンティティや規範、社会構造の双方に目を配る必要があることを確認し、調査準備をすすめた。具体的には基本属性、学校、住まい、仕事、家族、介護・医療サービスの利用、収入および支出などを尋ねる事前調査票を作成し、調査の効率化を図ると共に、数値データとして加工できるよう整備した。調査項目には、同年代の身近な人と比較した「不利な経験」や「生きづらさの経験」、女性規範などを盛り込んだ。10月より、まず中部地区においてパイロット調査を行い、その後本調査を行った。 こうした調査を通じて障害女性の多様な経験の記述を積み重ねることにより、彼女らをめぐる差別構造を明らかにすることができる点で、意義がある。調査項目に階層や地域、経済状況に関する質問項目を盛り込むことにより、障害女性がおかれた複雑な状況を、他のポジショナリティとの交差として捉えられることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は先行研究のレビューから研究枠組みを検討すること、またパイロット調査を行い、本調査に向けた調査票の作成、調査項目の設定および改編を行うという目標を設定していた。実際に29年度前半には「交差性」の概念を検討し調査準備を進め、中部地区に限定した先行調査を行うことができた。本調査は身体障害のある対象者を中心とした数ケースにとどまったが、研究計画に照らし合わせ、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、20~30名の調査対象者へのアプローチを予定している。とりわけ、知的障害、精神障害のある方も対象として加え、必要に応じて研究枠組みを改編しつつ調査をすすめていく。その後、得られたデータを随時整理し、障害種別、経済・学歴階層による差異に注目し、分析を加えて学会や学会誌において発表する。 対象者に生活史を軸にして「生きづらさ」や「不利」な経験を語ってもらう本調査は、事前の丁寧な説明、また複数回の面接を重ねることが必要である。以上より、調査に関わる協力者を増やしていくことも課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本調査がやや遅れ気味であり、謝金や旅費が一部執行できていないことが理由である。また文字起こしにかかる費用についてはタイムラグが生じることがあり、次年度以降の支出に含まれる。
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次年度使用額の使用計画 |
本調査をすすめ、謝金および文字起こしにかかる費用を支出する。また、学会出張等の旅費を支出をする予定である。
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