本研究の目的は、多胎育児者を事例として、障がい等の少数派の育児者の実態を可視化し、地域社会への包摂策を検討することである。 2年目は、昨年度に実施した、多胎育児者およびその家族を対象とした質問紙調査の分析をすすめるとともに、地域子育て支援者へのインタビューを実施した。インタビューに際しては、単胎・健常である多数派と、多胎等の少数派との共通の地域課題として「自然災害」を設定し、実際に、東日本大震災および熊本地震で災害対応をおこなった経験のある保育所や幼稚園等のスタッフ、子育て支援者へインタビューをおこなった。 インタビューの結果は、応急避難にあたっては、少数派の子どもたちには、その特徴にあわせた対応が必要かつ有効であることが示された。たとえば、ことばによる指示が入りづらい子どもたちにすみやかに避難行動を取らせるには、楽しい演出による避難ルート設定や、緊急時には大人とともに行動できるよう、物理的な手段をとることが有効である。一方で、硬直的な組織運営では緊急時の柔軟な意思決定は容易ではなく、マニュアル対応との兼ね合いが課題であることが示唆された。 総じて、育児支援関係者内では、少数派の子どもたちへの対応の難易度の高さや対応のノウハウは共有されていたが、避難所での生活場面では、まとめて「子ども」それも、親等の誰かケア担当者がいるはずの子どもであると一括されがちとなることもわかった。大人集団の中では、子ども集団全体が「少数者」となるため、少数者の中の少数派についてはイメージの共有が困難で、結果として排除されがちとなることがわかった。 回避するためには、地域社会での、少数派の子どもたちに関するイメージの共有がまずは必要だ。
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