研究課題/領域番号 |
16K04117
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
竹内 幸絵 同志社大学, 社会学部, 教授 (40586385)
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研究分担者 |
佐藤 守弘 京都精華大学, デザイン学部, 教授 (10388176)
熊倉 一紗 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (40645678)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 広告史 / グラフィックデザイン史 |
研究実績の概要 |
本年度は本研究の基幹である広告業界誌『プレスアルト』誌の所在調査に注力し、全冊の目録化を終えた。発行者の遺族から同誌コレクションを譲り受けた際には目録等がなく、段ボール箱およそ50箱に規則性なく収納されている状態であった。『プレスアルト』誌は、戦時・戦後5年の停止期をはさみ昭和61年まで、およそ45年間月刊で発刊された雑誌で、冊子体の各巻に20点余りの広告現物が付帯されている。作者の記述等当時の現況が記された冊子と、広告現物の双方が貴重な存在だが、発行部数が毎号100部と極めて少なく長らく幻の存在とされてきた。本研究は事前調査で当該コレクションにはこの現物が多く残されていると予想していた。 作業は、同誌の現在の所蔵者であり研究協力者である大阪新美術館の協力の元、同収蔵庫において上記の段ボールを開封し、1号づつ冊子と広告資料の確認を行った。全ての付帯広告資料に作品番号を採番し、全作品のスナップデジタル写真を撮影し、写真名称を作品番号につけかえ整理した。確認が終わった冊子と広告資料は中性紙箱に収納し劣化防止の対策を施した。 この作業の結果、広告資料はポスターの他、企業発行のリーフレットやちらし、パッケージ、ラベルなど多義にわたるグラフィック作品類であることが判明した。またそれらの資料の多くは雑誌の台紙に貼り付けられて外すことができない状態であることが判明した。このため撮影やデータベース化計画の一部を変更した。一部の資料は水濡れや、印刷直後乾燥前に折りたたんだなどの要因で、広げることができ無い状態であった。これについては今後専門家のアドバイスを得ることうを検討する。 以上のように本年度で全冊の所在確認・目録化が終了、第一次段階の整理は完了した。現存する冊子は278冊(号)、付帯広告現物はおよそ5560種類であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記載の通り『プレスアルト』誌を発行者の遺族から譲り受けた際には目録等がなく、何号が存在しているか、またそこに付帯すべき現物が何点揃って残っているかなど詳細が確認できていなかった。初年度の調査で現存するものが278冊(号)であることが確認でき、付帯している広告現物はおよそ5560種類であることが判明した。初年度の調査手順は所在を確認し目録化するとともにスナップ写真で現物の状態を記録する方法をとった。リストとの対照が容易となるようスナップ写真には作品番号を映しこんだ。 当初計画では目録作成と並行してデータベース化を進めることとしていたが、作品の種別が多義にわたることが判明し、データベースに必要とされる項目を最初から決定することが難しく、全ての目録完成後にデータベース化を行うこととした。そのため当初予定より早く初年度で全作品を目録化することが可能となった。このような一部計画変更を行ったが全体の進捗としては順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、初年度に目録化した情報を、より研究に供しやすいデータベース形式へと変更する作業を推進する。データベース化は3段階を踏んだ実装を計画している。まず初年度の成果をもとに一覧と写真が対照可能な簡易データベースを作成。この作成の間に冊子に掲載された情報の文字起こし作業を行う。2段階目ではこの文字起こし情報と簡易データベースを接合する。初年度のパイロット調査により、冊子掲載情報は予想より詳細にわたり、印刷形式や色数、印刷会社、制作依頼会社、デザイナーの所属等が掲載されていることが判明した。ただし冊子の年号によりそれらの情報が大きく異なるため、最初から項目を分けた情報の文字起こしは困難と判断している。そこで2段階目では一項目に全データを文字化したものを作成しこれと簡易データベースとを接合する。3段階目で項目を検討し、検索キーを独立させた形式にデータベースを整備する。 このような作業の一方で、本年度は研究協力者と共にこのデータを活用した新たな視点による日本の広告・グラフィックデザイン史研究を開始する。3年目にはこれらの成果を展示を伴う報告会にて公表することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査を開始した最初の3か月で、広告資料の種別がポスター、ちらし、リーフレット、カタログ、パッケージなど多義にわたることが判明した。このため、画一的なデータベースの項目を当初から想定することが困難と判断、目録作成とデータベース化を並行して行う当初予定を変更し、初年度は目録化に集中して作業を行った。 また資料の状態が当初想定していた形状とは異なり冊子に貼付糊付けされているものが多いことが判明した。この形状を崩さず目録作成作業に当たることとし、精細な写真の撮影を全点行うことは断念した。以上の状況から特にデータベース化費用が2年目に繰り越すこととなり初年度に未使用予算が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
データベース化作業を2年度に行う。高精細写真の撮影は、3年度以降に冊子から文字起こしする詳細情報がそろった段階で、撮影対象を検討したうえで実施する。(冊子に貼付糊付されていないものに限った撮影とするかどうかを、作品の詳細情報に照らして判断する)
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