研究課題/領域番号 |
16K04119
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
崎山 治男 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 感情労働 / 心理主義化 / グローバル人材 / 世界システム論 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果は、理論的なものと実証的なものとに大別できる。まず、理論的な成果を述べるならば、グローバル化する経済活動と労働の変化を、ウォーラスティンや彼の議論を引き継いだアリギ等の一連の世界システム論の下に位置づけた。 具体的には、中心ー周縁構造の相互依存性が19世紀~20世紀は物質経済を基盤とし、21世紀にはその飽和による危機が語られる。それに対して、産業構造や労働の形のみならず、ライフスタイルや生そのものを情報化し、情報空間やそこでの記号性を新たなフロンティアとする形で世界システムが形作られつつあることを指摘した。 同時にそれは、労働場面のみならずライフ・コースや教育への浸透をも導く。感情労働が主とした労働体系となるばかりではなく、ライフ・コース上で自らの自己実現のあり方を常にマネジメントしていかなければならなくなる。そしてこの点が現在強調されるグローバル人材の育成とも関わっているのである。これらの研究を論文「生の感情労働化と現代社会」に纏めた。 上記した点に関する実証的な考察も徐々に進め始めている。具体的には、労働場面ばかりではなく、友人・恋愛関係に関する雑誌記事やマナー・ブックを取り上げた分析を行った。そこでは、いかにその場その場でのやりとりをマネージメントするか、といった点ばかりではなく、長期的なスパンで、将来や労働場面での有用性といった点から人間関係や消費、経済活動をマネジメントすることが強調されることを分析しつつある。それらを通して、グローバル人材の実像への質的調査の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記したように理論的な視座を十分に基礎固めをし、感情労働とグローバル化との関連の理論化を達成した。そのことによって、グローバル人材として求められる像やスキル、その実態との落差についての雑誌やマナーブックを通した言説分析、実際のグローバル企業の実態についての質的調査に着実に向かいつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの作業を、その深度と実証性を高める形でおこなう。すなわち理論的課題としてはグローバル化とICT化というトレンドと、感情労働との結びつきについて更なる精査を行う。 これと相互反映した形で実証研究を行う。すなわち雑誌・マナーブックに関しては当初計画通り、年代やジェンダー、階層が異なるものへと対象を広げ、グローバル人材と環状マネジメントのスキルとの結びつきを考察する。さらに、国内外の通信・人材・IT業界における感情労働のアウトソーシングの実態と、グローバル人材が家事等で移民労働に依存しつつある現状を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実証研究への準備状況と受け入れ先の状況から、当初予定より遅く着手する必要が出たためである。次年度、実証研究としてグローバル企業の労働のアウトソーシングの分析を国内外で行う際の経費として活用する。
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