1年間の研究延長申請をした科研費課題の終年にあたり、これまでの4年間の調査研究の集約を行った。ケア・コミュニティの開発主体としての家族介護者組織の実態把握とその意義に関する理論的実証的研究をまとめた。全国の介護者組織の一定の総体把握については「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」及び「認知症の人と家族の会」を連携先としてその傘下の介護者組織の状況把握に取り組んできた。把握した男性介護者に特化した介護者のコミュニティ(組織)は全国に150ヵ所を数えたが、これらは「本研究で把握されただけでも」という限定付きなだけにさらに精緻な調査研究が求められている。各地に新しい組織が立ち上がりの準備をしていることも確認されているが、実践動向を研究面でもフォローしていくことが課題となった。こうした介護のコミュニティの臨床的把握によって明らかにされたことは、一つには各地に広がるコミュニティにおいて生成されるメンバー間の相互作用(メンバーシップ)が発揮する社会機能の意義であり、二つには、介護者への社会的支援に関する理論の根拠となるデータである。これらに関する研究成果は、学会等での招待講演(日本看護福祉学会市民公開講座、)及び論文・著書(『ケア・コミュニティの臨床』『長寿社会を生きる』等)として社会還元してきた。また、前年度までに実現することが出来なかった英国の介護者団体「CARES UK」「Alzheimer's Society UK」の視察(2019年9月5日~15日)を行い、海外での介護者組織化の研究動向をフォローした。その一端は、2019年度日韓交流・啓発セミナー「日本と韓国認知症介護で拓く未来」(主催:公益社団法人認知症の人と家族の会、2019年12月19日)で「日本の家族介護者支援の現状と課題」とする基調報告を行い、社会還元に努めた。
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