研究課題/領域番号 |
16K04122
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
佐藤 彰男 龍谷大学, 社会学部, 教授 (70249514)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バングラデシュ / 外国人労働者 / 国際労働移動 |
研究実績の概要 |
本研究は、バングラデシュ人労働者の日本における労働と生活の実態を明らかにすることを目指したものである。近年の外国人労働者研究は、技能実習生と日系人を対象としたものが主流であり、その他の外国人労働者に関する実証研究は、質量ともに限られている。 申請当初の予定では本研究において、おおむね2種の調査活動を実施する予定であった。ひとつは国内に滞在するバングラデシュ人労働者を対象としたインタビュー調査である。申請者らによる過去の研究から、滞日バングラデシュ人は広く各地に分散しているため、量的調査の対象とすることは困難であると考えられた。他面でバングラデシュ人は一般に親族や同郷者のつながりが強いため、インタビューに関しては回答者に次の回答者の紹介を依頼するスノー・ボール方式で展開することが可能と推測された。実際にも上記の方法によって50名をこえる滞日バングラデシュ人に対し、2時間程度のインタビューを採取することに成功している。 もうひとつの調査計画は、日本で働いた後、すでに帰国したバングラデシュ人を対象にアンケートを実施するというものであった。事前の調査によって、相当数の帰国バングラデシュ人がダッカとチッタゴンの両市に在住しており、量的調査を実施することは可能と考えられた。しかし、その後のバングラデシュにおける治安状況の悪化により、いまだ現地調査を実施できていない状況である。 インタビュー調査を統制的な性質が強いものにし、なおかつ採取数を増やすことで、量的調査の欠落をおぎなうとともに、現時点ではバングラデシュの調査会社による量的調査の実施を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年の首都ダッカにおけるテロ事件以来、バングラデシュ当局は治安維持活動を強化してきたが、依然として当地への渡航は制限されている。また2018年は同国の国政選挙が実施されたため、政治的な抗争が激化し、現地での調査活動を当初の計画どおり進めることが困難になった。そのため申請当初の調査計画で予定していた、日本で就労した後すでに帰国しているバングラデシュ人たちを対象とした量的調査は、現時点で実施されていない。 上記の理由で、本年度までの調査は国内に滞在するバングラデシュ人を対象としたものとならざるをえなかった。しかし滞日中のバングラデシュ人は、日本各地に広く分散しており、彼らを対象とした量的調査を実施することは、非常に困難である。 そのため可能な限り多くの統制的インタビュー調査を実施し、量的データの欠落を補おうとしてきたが、周知のようにインタビュー調査は1件ごとに多くの時間と労力を要する。そのため申請当初の予定をはるかに下回るデータ収集状況に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
バングラデシュの治安状況が不安定であるため、申請者自身が現地調査を行うことは難しい状況が続いている。しかし日本国内におけるインタビュー調査の蓄積は、すでに50件を越えている。当該のインタビューは質的調査に分類されるものではあるが、統制的な手法を用いているため、さらに採取数を増やしていくなら、量的調査によって明らかにすることを予定していた事実についても、ある程度はアプローチすることが可能と考えている。 また19年末から20年初にかけて、バングラデシュの調査業者を活用して、量的調査を実施することも検討しており、この計画が実現すれば、当初の計画と不足のない成果が得られるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
国政選挙等によってバングラデシュの治安状況が悪化したことから、予定していた現地調査を実施することができなかった。次年度は日本国内において、滞日バングラデシュ人を対象とした調査活動を継続するとともに、バングラデシュの調査企業を活用した現地調査を計画している。
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