研究課題/領域番号 |
16K04123
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
藤澤 三佳 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (00259425)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 表現 / アート / 精神科病院 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、苦難の生活史のなかで、さまざまな精神症状をもつに至った患者に関して、それを他者に伝え他者と交流をおこなう際に、言語以外の表現媒体を用いている人々に注目して、どのような表現をおこなって苦難から解放されるという自己変化をとげているか、その表現をおこなう環境の「居場所性」を中心に、日本社会学会における「アートベースリサーチの可能性と実践部門」において学会報告「精神科通院患者の造形活動における自己表現と他者との関わり」をおこない、それをもとにして、論文「精神科病院の造形教室において表現すること~自由な表現、表現の変化、教室の「居場所性」を中心に」の執筆をおこなった。同じく報告として、「精神科病院の患者のアートによる自己表現」という題で、韓国、アメリカの研究者と共に、国際研究集会「越境体験:境界を揺さぶるアート(於:成城大学)」において招待講演をおこなった。苦難の体験をどのようにもつにいたるのかという人間の経年的プロセスを知るために、人々の生活史初期に長時間を過ごす家族や学校の問題を中心に、児童虐待、いじめ、ひきこもり、非行、発達障害、貧困等の問題に関して、当事者の会や親の会を中心に比較研究をおこない、また共通した視覚から横断的に調査をおこなった。 また苦難の体験をもつ当事者が形成するさまざまなグループを調査し、なかでも、不登校・ひきこもり現象を集中的に調査し、特に青少年のひきこもり現象に加えて、近年問題となっている50-80問題(子供が50代、親が80代)も調査対象にして、「市民の会エスポワール」を当事者や支援者と共に立ち上げて参与観察をおこなった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況について、平成29年度におこなう計画であったことがらは実行することができ、当該年度に予定していた調査内容、苦難の体験をどのようにもつにいたるのかという人間の経年的プロセスの把握をおこなえた。その理由としては、プライバシーに関係する内容、特に人々の生活史初期に長時間を過ごす家族や学校の問題を調査が可能となり、そこには「市民の会エスポワール」等の当事者の会や親の会の調査協力が得られた点が大きかった。 それらの研究成果発表においても、日本社会学会のなかに、今年度はテーマ部会として、「アートベースリサーチの可能性と実践部門」が立ち上がり、そこにおいて報告がおこなえたり、韓国、アメリカの研究者と共に、国際研究集会において議論をすることができたことも実りある進展につながった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策に関しては、さらにさまざまな苦難の体験をもつ人々が集まる自助グループ間の比較研究や横断的研究のなかでの共通点の解明をおこなう。特に非行臨床関連の調査を発展させ、 それらの研究成果は領域的比較研究の意味もあるので、社会学会の他に描画療法学会等の心理学会においても学会報告をおこないながら、学際的研究をおこなう計画である。
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