研究課題/領域番号 |
16K04124
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
難波 孝志 大阪経済大学, 情報社会学部, 教授 (00321018)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 軍用地跡地 / 再開発 / コンバージョン / 日独比較 / 公共性 / 都市計画 / 都市再開発 / 跡地利用 |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者が2016年9月から1年間の予定で、ドイツ連邦共和国ドルトムント工科大学への滞在を許されたことを前提に計画した。 日独両国は、戦後自国内に広大な他国の軍事基地が建設されてきた。日本、特に沖縄では1998年以降、米軍基地の所在に対する補償型振興計画導入によって、開発過剰の状態が蔓延している。加えて2012 年の沖縄振興特別措置法の改正および跡地利用特措法によって、補償型の基地跡地利用が開始された。これら補償型の公共事業は地域社会をさらに過剰な開発へと導くのではないか。これが本研究の出発点である。 他方、同様に他国軍軍事基地が建設されたドイツにおいても跡地利用が進行中で、ドイツはその先進国と言うこともできる。また、日本における近代都市計画制度は、ドイツからの制度輸入によって形づくられてきた。本研究は、日独比較の中で跡地利用プロセスについて、その普遍レベル、特殊レベル、個別レベルから検討する。したがって、本研究の最大の目的は、沖縄の振興開発と基地跡地利用問題をドイツとの比較の中で照射し、ひいてはそれらの結果を、わが国の今後の公共事業政策のあり方の検討に資することにある。 ドイツ調査へ向けて出発前の本年度前半は、主に軍事基地跡地再開発の日独比較のための分析枠組み検討、調査項目の検討・作成に充ててきた。 本年度後半のドイツ到着後は、本研究に適合した通訳の人選を開始し、同時にドイツにおける軍用地返還の統計的把握、調査候補地の選定に着手した。候補地確定後は、候補地所在の図書館における資料蒐集、対象地域・対象都市の歴史的背景の把握、経済・社会的実態の把握などを行った。また、再開発関係機関などへの聴き取り調査を実施し、再開発の実態把握、関係資料収集を行った。これらに並行して、日本では研究協力者による沖縄研究を進めるとともに、日本の軍事基地跡地再開発研究の論文を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツ到着後、本研究のテーマの特異性によるのであろうか、候補地の選定および通訳者依頼に予想外の時間を要した。そこで、まずは日本からは利用することのできない大学研究ネットワークをフルに活用して軍用地跡地再開発に関する資料蒐集を行うとともに、大学や公共図書館等における資料蒐集、通訳を伴わない英語による独自の聴き取り調査を行うことに力点を置いた。 これらの細かな計画の修正によって、順調に軍用地跡地再開発が行われている事例や再開発が滞っている事例、アメリカ軍基地跡地、イギリス軍基地跡地などの諸特性について検討の結果、本年度は2か所の事例候補地を選定し、エクステンシブなデータ収集を行うことができた。結果的に、ドイツ到着直後は遅れ気味であった調査計画も、概ね予定通りに進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、アメリカ軍基地跡地やイギリス軍基地跡地に焦点を当てて、2か所の事例について現地調査を実施してきた。 次年度は、まずはこれらの事例の立地する市町村や州の機関に対するインテンシブな調査を実施する予定である。また、可能であればドイツ連邦共和国の担当機関への聴き取りも実施したい。そして、これらの事例とは別に新たにフランス軍基地跡地の再開発や、旧ソ連軍基地跡地再開発についても、事例研究の範囲を広げていきたい。帰国の前には、これまでに蒐集した資料をもとに、ドルトムント工科大学の教授や大学院生とともに、ドイツ基地跡地再開発の実態についての討論や意見交換を行う予定である。 そして帰国後は、研究協力者の協力のもとに、沖縄の事例についてのインテンシブな調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
通訳者の依頼に時間を要したことによって謝金に、調査事例をドイツ滞在先の近郊に設定したことによって交通費に、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、本調査に適合した通訳を依頼することが可能になったので、政府機関や旧東ドイツ(旧ソ連基地跡地)における聴き取りを実施の予定である。
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