①現代日本における相続について、量的調査の分析を行った。多変量解析によって、規範要因(都市化や文化的規範にもとづく地域による差、学歴による差、きょうだい数やきょうだい順位による差、個人の規範意識による差)、資源要因(職業・収入などの社会階層による差)、状況要因(親との地理的距離による差、介護など援助の有無による差)などをコントロールしても、少額の金融資産については男女差が小さく女性でも相続経験がある人が多いが、住居・土地など不動産などには男女差が大きく男性の方がより相続経験がある人が多い傾向が見られた。父系規範は、ある人が多い側面では弱まっているが、他の側面(住居など不動産)では維持されており、多次元的な傾向を示していることがわかった。 ②現代日本における相続について、インタビュー調査の再分析を行った。男性では配偶者・子などに介護してもらい、子たちに相続させたいという意識が多い傾向が見られた。一方、女性は介護は公的サービスを利用し、その費用は自分たち夫婦の財産でまかない、それが余ったら相続は子に平等に相続させたいという意識が多い傾向が見られた。 ③同居・援助・相続など世代関係についてこれまでに行った研究結果を、英文に翻訳し、2つの国際学会、それに加えて海外・国内の研究者が集まった研究会で報告し、情報交換を行った。その結果、東アジア諸国には、親族関係について共通点もあるが、相違点もあり、今後の比較研究やその結果の国際発信をするための人的ネットワークを得ることができた。
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