コモンズという場所の性格に根差した地域管理政策

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K04127
• 研究機関: 四天王寺大学
• 研究代表者: 五十川 飛暁 四天王寺大学, 人文社会学部, 講師 (00508351)
• 研究期間 (年度): 2016-10-21 – 2021-03-31
• キーワード: コモンズ / 生活意識 / 地域空間の重層性 / 地域空間の可変性

研究実績の概要

本研究は、コモンズ空間に対して人びとがどのようにかかわってきたのか、そのつきあい方の検討をもとにして、地域社会の空間管理にあらたなヒントを提出することを目的としている。研究期間の4年目となる本年は、前年度に公表した研究成果をふまえた情報の集積を中心に研究を進めてきた。すなわち、当該研究成果においては地域コミュニティにおけるコモンズ空間の利用のされ方を公共性（公・共・私のあり方）の観点から分析するとともに、そこから、事例とした人びとにとっての身近な空間は、公・共・私のどれかが固定されているというよりも、その時々で濃淡をともないながらともに成立してきたような空間であることを見出した。とともに、そのような空間の管理を考えるにあたっては、そこにかかわる現場の人びとの判断や考え方がとくに重要になってくるということも明らかとなった。そこで、オーバーユースなコモンズ空間またアンダーユースなコモンズ空間の両者について、実際にどのような利用のあり方に対して集合的な納得や理解が得られることになるのか、対象となる空間の社会的位置づけやかかわる者の属性もふまえたデータの蓄積を進めた。なお、空間そのものだけを見ているのでは人びとの考え方には十分には迫れない。そこで、現場の人びとの暮らしやその変化、コミュニティのあり方などを含めた、生活の文脈までを押さえることに努めた。次年度にて、これまでの資料の分析をさらに進め、生活の論理をふまえた地域空間の管理論として一般化をはかる予定である。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

聞き取りや参与観察による質的データの蓄積と文献資料の収集、またそれらの分析を進めたものの、採択時期の関係上、次年度使用額が残ることになった。補助事業期間を延長することで、その分の対応を進めていきたい。

今後の研究の推進方策

次年度は、これまで収集してきたデータについての補足的な追加を進めつつ、さらに踏みこんだ検討を進めていきたい。具体的には、まずはこれまでと同様に文献資料の収集と整理を進めながら、とくに自身の生活論的立場を明確にしていく作業を進める。また、最新の情報からサジェスションを得る機会として、関連する学会や研究会にも継続的に参加する。他方、事例地におけるフィールドワークについては、事実レベルでの補足的調査とともに、空間の差配をおこなう現場の人びとの判断や考え方というところにポイントをおいた心象レベルの調査をさらに充実させる。そのうえで、これまでに得てきたデータをまとめつつ解釈を加えながら、生活の論理をふまえた地域空間の管理論としての一般化を目指す。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じたのは、採択時期の関係上、初年度の研究期間が限られたものになったことの影響による。次年度の使用計画としては、まずは前年度に引きつづき、継続的にフィールドワークを実施する予定である。とともに、研究課題に関連した学会や研究会に参加し、情報収集に努める。また、関連する文献や資料、フィールドワークに必要となる物品、これまでの資料をまとめるための機器の購入を検討している。以上の旅費や物品費として使用する予定である。