2019年度の主な研究実績は、韓人移民と行政との媒介役割を果たす韓人系市民団体の活動を整理する点にある。 第1の韓人系市民団体として、「ニューヨーク家庭相談所」があげられる。この団体は、韓人への相談、子どもの相談、職業教室、放課後学校というプログラムを運用し、主に移民女性の保護活動を行っている。第2の韓人系市民団体である「ニューヨーク韓人奉仕センター」は、移民者教育や高齢者向けの敬老センターを併せて運用している。この団体の特徴は、ニューヨーク市のなかで移民者施設としては最も規模が大きく、健康、レクレーション、精神健康の維持、移民者職業訓練を行っている点だ。この組織の運営者は移民1世から2世へと変わりつつある。第3の韓人系市民団体の「YWCA」は、職業教育、英語教育、放課後学校、老人センター、福祉サービス等の高齢者から青年までの世代を対象とするプログラムを実施している。この組織のリーダーは移民1.5世の女性たちであり、比較的若い移民者が運用している点が注目される。その他、「FAMILY TOUCH」(社会福祉相談)「元光福祉館」(低所得層への相談)、「米州韓人青少年財団」(青少年向けの学習・部活活動支援)等の市民団体が存在している。 調査研究を踏まえて、韓人系市民団体は、①移民1世から移民1.5世や2世が中心になりつつあること、②高齢者へのプログラムから始まって、徐々に移民女性や青少年へと多様化しつつあることの2つの傾向を持っており、今後、これらの市民団体は移民者と行政を媒介するものとしての機能を強めていく。ニューヨーク市の韓人移民社会がいかに韓人社会の特徴をもつのかを比較するために、日本の山口県下関市調査も併せて行っており、韓人社会との比較を試みた。
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